・・・ そしてドイツやイタリーにおいて誤った政権の最も切実な犠牲が婦人大衆であったとおり、日本でも好戦的な特権支配者たちの犠牲となったのは、誰よりも先に婦人大衆であることを明瞭に語っているものです。 戦争へ召集する一枚の赤紙はその絶対命令・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・という作品が問題になったように、題材に向う態度が、戦争当時の好戦的な亢奮した雰囲気をそのままとり戻しているようなものがあらわれた。二・二六事件の秘史というものが、当時の内部関係者であったファシスト軍人によって主観的に合理化してかかれたものが・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・するという、好戦の映画であった。イタリー大使館かどこかの好意による特別試写会で、それを見た。そして「脱出」という字は深く心に刻みこまれたのだった。「日本脱出」は、考えてみれば、白鳥のなぐさみにつけられた題ばかりでなく、日本のきょうの文学・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・すべての交戦国にとって銃後というものは存在しなくなった。戦災という言葉は戦争によってひきおこされた輪の外での災難を意味してつかわれているようだけれども、そして、なにか附随的な現象であり、それは、のがれたものとのがれられなかったものとは本人た・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・本当は、医者にチェッコのカルルスバード鉱泉へ行けと言われたのだが金がなかった。一九三〇年二月「ロンドン印象記」。秋「子供・子供・子供のモスクワ」を送る。『戦旗』に二三原稿を送った。或るものはついたが或るものはつかなか・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・少なからず抜けては居るが、この爺をこの上なく大切がって居る女房は、百姓共の小供の着物等を縫ってやって僅かの口銭を取って居る。 長い事、煙草をふかして居た甚五郎は「やっこらさ」と立ちあがって、祖母の居る茶の間の入口に小山の様に大きく膝をつ・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・ロシア、中国、朝鮮の人民が文盲撲滅の第一頁においてソヴェト権力、抗戦救国、民族独立の文字を知らされてゆくのとはひじょうにちがいます。イデオロギーのたたかいは、日本においてますます複雑な課題となりつつあります。すべての専門家は、単に、大衆の文・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・ 日本人は女でさえ、軍国的であり好戦的であるという前に、わたしたち今日の日本の心は、これまで日本を支配した権力と人民との関係の委細をことこまかに理解しなければならない。そして、以上のような人民の社会生活とその感情の現実を見出したとき、わ・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・「マ元帥、全面的に承認」という記事が、あわせてのせられていた。「交戦権抛棄の特点指摘」という小見出しもついていたから、世界平和の確立のために、ともかくその点だけでも評価されたのであろうと思った。訓練ある民主精神が、この奇妙な改正草案の矛盾の・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
・・・こっちの温泉はドイツのバーデン・バーデンや何かと同じで、冷鉱泉をのんだり、医者に皆導かれて浴するので箱根へ行ったように、つくなり一風呂浴びて、ユカタに着かえるような気分は見られません。こちらは非常にリンゴが多い。それから乾草がよい。乾草車を・・・ 宮本百合子 「ロシアの旅より」
出典:青空文庫