・・・その間に四一年十二月九日から翌年七月末、巣鴨拘置所で病気が悪化し意識不明になるまでとめておかれた。少し眼も見えるようになった一九四三年の春から秋にかけて、調べのつづきということで、警察や検事局へよばれた。警察では、「三月の第四日曜」という小・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第五巻)」
・・・東京の市中では想像もつかない広い空、耕地、遠くの山脈。竹やぶの細い葉を一枚一枚キラキラ強い金色にひらめかせながら西の山かげに太陽が沈みかけると、軽い蛋白石色の東空に、白いほんのりした夕月がうかみ出す、本当に空にかかる軽舸のように。しめりかけ・・・ 宮本百合子 「田舎風なヒューモレスク」
・・・ 第一次五ヵ年計画のすんだ今では全農戸の七割が集団農場化し、耕作機械、刈入機械の配給所は三千百ヵ所にまで殖えた。耕地面積は五年前を一〇〇とすると一四五で、世界のよその国ではアメリカでも農業恐慌で耕作面がどんどん縮少しているのに比べて実に・・・ 宮本百合子 「今にわれらも」
・・・ 果しない耕地にトラクターが進んでゆく。青葉の繁った木立ちのこっち側には集団牧場がみえる。楽し気な牛、馬、羊、年とった集団農場員が若いもの、孫のようなピオニェール等にかこまれて、働き、ラジオをきき、字をならっている。 鉄橋がある。遠・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・ある場所では機械や牛馬の力も加えて、男のいないあとの耕地を女が働いてやっている。 海へ女がのり出して働かないという昔からの習慣は、その活動が女の体力にとって全然無理だからなのだろうか。それとも穢れをきらうというようなことに関してのしきた・・・ 宮本百合子 「漁村の婦人の生活」
・・・彼女は日やけした小手をかざして、眩しい耕地の果、麦輸送の「エレバートル」の高塔が白く燦いている方を眺めた。キャンプの車輪の間の日かげへ寝ころがって、休み番の若い農業労働者が二、三人、ギターを鳴らして遊んでいる。 郵便局、農場新聞発行所。・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ バカと荒地だ」「パンフョーロフは、謎ばっかかけるけれど、その終りが、ありゃしない」 細い、確かりした眼付でブリーノフはつづけた。「シロコイエ村に、階級闘争が起らなくちゃ成らなかったべえか。俺にゃ分らん。村のあらかたが富農だ。た・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・面積一億デシャチン、価格百三十億金ルーブリの耕地が「十月」によって確実に農民の手にわたった。 ところが、戦後共産主義の毎日が始って見ると農村にはいろいろな困難が起って来た。 農民の間の反動的分子は密造酒を飲みながらゴネだした。「・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・然し、大阪、高知、長野等拡大中央委員会にわざわざ代表が出席した程比較的強力な支部からの報告でさえ、その中には一言も、支部に於ける婦人委員会の問題、婦人大衆に対する文学的働きかけについての対策というものは言及されていなかった。 これは作家・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
八月七日 [自注1]〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 モネー筆「断崖」」の絵はがき)〕 手紙に書きもらしましたから一寸。多賀ちゃんから先程手紙で、病気は何でもなく保健所でレントゲン透視をしてもらったら、どこ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫