・・・ 歴史の或る時期に文化は本質に停頓しつつ、文学の購買力は高騰することがある。作家は、後者と自分の書く腕とを現象的に結びつけて、それを文学的な創作として自分にも云いきかせている危険はどこにもないと云えるだろうか。 今日の私たちにとって・・・ 宮本百合子 「作家と教養の諸相」
・・・あなたの眼力には恐れいったと叩頭するとき、人は、嘘もからくりも見とおしだ、という事実を承認したわけになる。 プロレタリア文学の理論は、いくつかの点で、文学とその文学の発生する基盤としての社会とのさまざまの関係を明らかにした。社会科学の到・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・という短篇をかいておられるが、そこにも女学校入学試験のために苦しむ親の心、子の心が語られていて印象にのこった。口頭試問というものが、いろいろむずかしい問題をふくんでいるということが、この小説から与えられた印象の焦点をなした。G学園とかいてあ・・・ 宮本百合子 「新入生」
・・・どうしてそんないい条件の『星』や『レーニングラード』が、くだらないゾシチェンコに叩頭したり、アフマートヴァを魅力あると思いちがえしたりしたのだろう。ジダーノフの報告には、それらの雑誌の編輯者が、「友誼上」公私混同したと表現されている。ジダー・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
神奈川県足柄郡下足柄村十三部落 演習中の野宿反対 人家に迷惑をかけず宿やにとめろ 宿舎のない演習なんかやめたがいいんだ。○江東地区の一人、暗闇夜、自転車をとばして地区のデンタンを電車・乗合自動車のうしろ・・・ 宮本百合子 「大衆闘争についてのノート」
・・・翌年、もう節は喉頭結核の宣言をうけ、その後は転々として五年間の療養生活の間に主として短歌に熱中し『アララギ』に「鍼の如く」数百首を発表した。この時代節の歌境は非常に冴えて、きびしく鋭く読者の心に迫る短歌を生んだ。しかし、散文としては終に「土・・・ 宮本百合子 「「土」と当時の写実文学」
・・・ 戦時中、軍需生産のために膨脹した生産能力を、同じに近い利潤を生むように運転して行こうとする努力、その一方では、それと矛盾して見える物価の高騰をふせぎ、インフレーションのおこることをおさえ、賃銀の安定のために企業家が利潤低減のさけがたい・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・見ずしてすぎるという高踏派的態度は実は「無力」の粉飾なのである。 プレハーノフの女弟子、ソヴェト同盟のマルクス主義機械論的修正派の最も有名な代表者アクセリロードは、「トルストイの創作を批評するのにもスピノザの哲学を分析する際にも、彼・・・ 宮本百合子 「婦人作家は何故道徳家か? そして何故男の美が描けぬか?」
・・・東京で麹町と江東地区との生活にちがいがあるとおりである。 一九一〇年といえば、日本の明治四十三年、いわゆる「大逆事件」で幸徳秋水以下三十余名の人々が検挙され、ファーブルの『昆虫の社会』という本まで社会という字がついていると云って発禁され・・・ 宮本百合子 「婦人デーとひな祭」
・・・もし作家が大衆化の意味をあやまって、後者の態度にしたがうようなことがあれば、それは大衆を低めているものの力に屈すと同時に、作家自身を無力化せしめている力にも自身から叩頭することになってしまうであろう。 近頃は、嘗てプロレタリア文学運動に・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
出典:青空文庫