・・・ 日本のわたしたちは、全面講和によって世界の全面に対して平和日本の人民であろうとしている誠意を表現し、それを貫徹してゆかなければならない。戦時中日本の政府は、侵略主義の本質を、見ための珍しい美しさや異国情緒でカムフラージュしようとして日・・・ 宮本百合子 「婦人デーとひな祭」
・・・ その低い文化水準を高めるために、経営者たちは工場の寄宿舎につめられている労働婦人にどんなものを読ませ、どんな講話をきかせているだろうか? 商業ジャーナリズムの一隅、工場御用雑誌営業者が歴と存在して、『白百合』『処女』などという印刷・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・わたしたちが日本のこんにちの現実の中に生き、そして死ななければならない八千五百万の日本人民の一人としての自分の人生を思うとき、たとえば全面講和の要求にしろ、まったくわたしたちの直接な世界平和への良心の声であり、軍事的奴隷としてでなく生きるこ・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
朝鮮に戦争がおこってから、世界じゅうの平和運動は目立って活溌になり、真剣さを加えた。日本の五人の名流婦人たちが、「非武装国日本女性の講和問題についての希望要項」をダレス国務省顧問に託して、アメリカの世論に平和を訴えたことは・・・ 宮本百合子 「平和の願いは厳粛である」
・・・そうでなければ次ぎの進歩が分りかねるからであるが、昨年の夏、総持寺の管長の秋野孝道氏の禅の講話というのをふと見ていると、向上ということには進歩と退歩の二つがあって、進歩することだけでは向上にはならず、退歩を半面でしていなければ真の向上とはい・・・ 横光利一 「作家の生活」
一 講和近づけりという噂がある。しかし戦争はまだやむまい。ばかばかしい話だが、英独両国で面目をつぶすのをイヤがっている間は、とうてい仲なおりはできぬ。 戦争はまだ幾年も続くだろう。そうして結局、各国ともに、社会的不安と政治的・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
・・・わたくしは友人の岡本の言葉に刺激されて、藤岡作太郎著『国文学史講話』の序文を読んだ。そうして非常に動かされた。しかしそのなかに「とにかく余は今度我が子のあえなき死ということによりて、多大の教訓を得た。名利を思うて煩悶絶え間なき心の上に、一杓・・・ 和辻哲郎 「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」
出典:青空文庫