・・・ 誤解をなくするために断っておきたいと思う事は、左に地名と対応させた外国語は要するにこじつけであって、ただある一つの可能性を示唆し、いわゆる作業仮説としての用をなすものに過ぎないという事である。また例えばアイヌ語との関係を示しても、それ・・・ 寺田寅彦 「土佐の地名」
・・・この場合に結果を都合のよいようにこじつけたり、あるいは有耶無耶のうちに葬ったり、あるいは予期以外の結果を故意に回避したりするような傾向があってはならぬ。却って意外な結果や現象に対しては十分な興味をもってまともに立向かい、判らぬ事は判らぬとし・・・ 寺田寅彦 「物理学実験の教授について」
・・・それについてそれをフィロソフィーにしよう――それをまあこじつけてフィロソフィーにして演説の体裁にしようというのです。どういう風にこじつけるかが問題であります。それが旨く行けば聴かれそうな演説である。巧く行かなければそれだけの話である。まあど・・・ 夏目漱石 「模倣と独立」
・・・なんだか、そんな、こじつけみたいな、あてこすりみたいな、芝居のせりふのようなものは、一向あなたに似合いませんよ。」ところがラクシャン第一子は案外に怒り出しもしなかった。きらきら光って大声で笑って笑って笑ってしまった。その・・・ 宮沢賢治 「楢ノ木大学士の野宿」
・・・ 自分の生活や、人々の生活を外から直接間接に圧包み、何等かの変型やこじつけを強いていた物が無く成ると、始めてその奥に在った箇々が現われて来る。一つとして同じものの無い箇々の生活が、ありの儘の色彩と傾向とで姿を現わすのである。 今日我・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・狂乱やこじつけを自然はいつもうけつけない。黙ってしっかりそれをくいつくし、正しい秩序にかえして再現する。その偉力の美しさ、無限の鼓舞がそこにある。世代から世代へ渡る橋桁は人間の心のその光で目釘をうたれ鏤められていることを彼等は遂に見失わなか・・・ 宮本百合子 「彼等は絶望しなかった」
・・・人間共に未来を見せず、奴等の悦ぶ思弁にこじつけてさも世界を救う大思想のように思わせ思わせ野心と所有の慾望を徐ろ徐ろ植える手際には、俺も参った。生れては死に、死んでは生れる人間共が、太古の森も見えない程建て連ねて行く城や寺院、繁華な都市が、皆・・・ 宮本百合子 「対話」
・・・ 私は、日本映画は嫌いなのだが、蜂雀を麻雀とこじつけた幼稚なおかしさや、澄子がどんなに真似をするのかという好奇心に釣られた。垂幕をあげて入ると、中は満員であった。やっと、二人が立つと、すぐ麻雀が始まった。蒲田で、澄子その他が麻雀をして遊・・・ 宮本百合子 「茶色っぽい町」
出典:青空文庫