・・・子供も死んだが大人も死んで、孤児がウンとできました。 そういう孤児をソヴェト同盟では立派な働きてとして育てるために多くの費用をかけて国家で「子供の家」を組織したのがそもそも「子供の家」のはじまりです。 今では、モスクワみたいに大きい・・・ 宮本百合子 「従妹への手紙」
・・・ またこんどの大戦前に堀口大学氏の訳で出版されたマルグリット・オードウの「孤児マリー」という独特な小説があった。この小説の作家、マルグリットはパリのつつましい一人の裁縫師であった。裁縫工場に勤めて働いている裁縫女工ではなくて、個人から小・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・これまで家を持たなかったわけではないから、いろいろな世帯道具は大体古くからのがあったが、鍋や釜、火箸、金じゃくし、灰ふるい、五徳、やかんの類は、そう大していいものをつかっていた訳もないので、みんなどっかへとんでしまったり、悪くなったりしてい・・・ 宮本百合子 「打あけ話」
・・・いかにも関東の古寺らしく、大まかに寂び廃れた趣きよし。関西の古寺とは違う。雰囲気が。 小僧夕方のお勤め。木魚の音。やがて背のかがんだ年よりの男が別な小僧をつれて出て来、一方の大きい浅草観音のと同じ扉をギーとしめ、こっちに来て賽銭箱をあけ・・・ 宮本百合子 「金色の秋の暮」
・・・きょうの辛さに喘いでいる数十万の未亡人、孤児、戦傷者たちは、かつてはすべて護国の宝であったのだ。法隆寺の例にむきだされた行政官僚の文化に対する無責任は、二月二十一日の読売にのった高瀬荘太郎文相の私立学校つけとどけ木戸御免説となって再現してい・・・ 宮本百合子 「国宝」
・・・通俗文学の作者も自信をもって、通俗小説の彼らの所謂大衆的本質を固持していたのであった。 今日、再び文学の大衆化が云われているのであるが、これは、かつてプロレタリア文学が独自の立場から、大衆性をとりあげた時代とは大いに趣を異にして来ている・・・ 宮本百合子 「今日の文学に求められているヒューマニズム」
・・・マリイ・オゥドゥウの「孤児マリイ」は何とまざまざと女の子のための孤児院の生活感情を語っているだろう。「格子なき牢獄」という映画にはリュシェールという若い女優の美しさばかりでなく私たちの心をうつものがあった。そして、それよりもっと生のままの身・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・それらの息子等の生活態度に反対しつつ、抽象的に人格の自由を重んじ無抵抗ならんとした心持が一つの矛盾となって、現実的な形での対立は固持し得なかった一家の父としてのレフ・トルストイの難破した姿。 思想的にはこれと意味がちがい、もっと弱い調子・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・ 世界に何千何万人の未亡人がいるか、孤児がいるか、戦災者がいるか、この人たちはみんな戦争を欲していません。 この社会を発展させようとしている世界の婦人は戦争を欲していない、彼女たちの涙がそれを教えました。 世界民主婦人連盟は八千・・・ 宮本百合子 「世界は平和を欲す」
・・・数百万人の戦争未亡人たちのこんにちの生活と、孤児たち、浮浪者たちのこんにち。都内の子供の生活は、そういう日本人民の破滅に蝕ばまれていて、風がわるいからと、自分の貰った子たちは学習院に入れる文学者たちは、その学校の土堤の中に、日本人民の独立や・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
出典:青空文庫