・・・その背後にある思想というのは、五・一五事件、二・二六事件と、暴力で侵略戦争遂行の可能な軍部独裁にまで推進させてきた超国家主義、軍国主義その他、極東軍事裁判の法廷が、それをこそ共同謀議の思想として、有罪を宣告したファシズムの思想である。あるい・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
・・・その時話していた人のその日の記念日のわけを説明する講演が終ったら、演台の下にひかえている音楽隊が高らかに、あっちの国歌になっている歌の一節を奏した。そしたら、司会者が、いきなり、今度は日本の女の人が皆に挨拶をするからといってしまった。 ・・・ 宮本百合子 「打あけ話」
・・・という表現の心理を辿れば、刻下の逼迫は人民がみんな自分たちで何とかやりくって行かなければならないのではないか、という公憤に立っているとも見られるのである。この一事をみても、私たちは、全く自然で正しい政治というものの理解の、つい扉の外にまで迫・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・青野氏は最近の論文で、プロレタリア文学の存在の根強さの上に安んじ、刻下の社会事情の中にあって闊達自在の活動をし得る自信こそプロレタリア作家の持つべき生活力の強さという風に言われているのであるが、この闊達自由ということに就いてはその響きが今日・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・時代への意識というものが少くとも文学との関係でとりあげられる限りは、刻下の題材を書くか書かぬかという現象のもう一歩奥に歩み入って、それが何故どのように書かれたか、或は書かれなかったかという点にまで迫って観察し、考えられなければならないものだ・・・ 宮本百合子 「作家と時代意識」
・・・そこで人形芝居、即興劇その他で、刻下の社会的問題を芸術化して農民に見せるのだ。同時に、農村ではどんな芝居がよろこばれ、要求されているかということを専門的な立場から研究する。 ――聞いているだけでも一寸わるくないな。儲けばっかり考えている・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・である刻下の情勢とプロレタリアートの課題から扱われている。杉山氏は同志小林を高く評価しながら、これらの発展の具体的な点を理解することは出来なかったのである。 同志貴司山治が『時事』に書いた文芸時評中にも、この作品を形象化の欠如という・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価によせて」
・・・ 作家が女性であった場合と、男性であった場合とで、又作品を貫く感激も違って来るでしょうが、それがとにかく刻下の実際問題にふれていることによって現れる切実さだけは、共通に認め得る点でしょう。 先頃、エイ・エス・エム・ハッチンスンと云う・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
・・・しかし、一人の作者がその題材でだけ刻下の現実の一面に触れているというばかりで、果して現実をプロレタリア作家としての立場で描き得ていると言い得るものであろうか。プロレタリア文学が運動としての形を失っているからと言って、プロレタリア文学の作品の・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・ 然し昨今の作家同盟の活動が急速なテンポで闘争的な大衆の刻下の生活を反映する文化的要求をとりあげていることは、サークル活動、文学新聞の発刊などで明かだ。 我々は、我々自身の立遅れや、戦術上の未熟を恐れるところなく承認しよう。何故なら・・・ 宮本百合子 「ブルジョア作家のファッショ化に就て」
出典:青空文庫