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・・・「厄年や、あかん、今年やなんでも厄介にならんならん。」「そうか、四十二か、まアそこへ掛けやえせ。そして、亀山で酒屋へ這入ってたのかな?」「酒屋や、十五円貰うてたのやが、お前、どっと酒桶へまくれ込んでさ。医者がお前もう持たんと云い・・・
横光利一
「南北」
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・・・昨年はいくらか出たが、今年は比較的多く、庭のところどころに半坪ぐらいずつ短いのが生えそろっている。竜の髯の間にもかなり萌え出ているところがある。しかし冬は必ず消えるのであるから、京都の杉苔のようになる望みは全然ない。それを見て私には、東京と・・・
和辻哲郎
「京の四季」