・・・しかし私はこのようなわずかの材料から語原説などを提出する意は毛頭ない。ただ、一つの興味ある事実を注意するだけである。 コマ型、タラ型、フジ・クジウ型、ユワウ型についても同様なことが言われるのであるが、これらは後日さらに詳しく考えてみたい・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・の「毛唐」がギリシアの「海の化けもの」ktos に通じ、「けだもの」、「気疎い」にも縁がなくはない。 話は変わるが二三日前若い人たちと夕食をくったとき「スキ焼き」の語原だと言って某新聞に載っていた記事が話題にのぼった。維新前牛肉など・・・ 寺田寅彦 「言葉の不思議」
・・・ ついでながら、桿状菌バクテリアの語源がギリシア語のステッキであるのはちょっとおもしろい。病魔のステッキが体内をあばれ回るのである。 日本で製造して売っている金具付きのステッキはみんな少し使っていると金具がもげたり、はじけたり、へこ・・・ 寺田寅彦 「ステッキ」
・・・また旧い記録例えば記紀のごときものの記事にあるような語源説が信用出来ないという事は既に学者の明白に認めているところである。それではほとんど唯一の有意義な方法と考えられるのは、現在日本人と隣接する民族の国語との関係を捜す事である。 こうい・・・ 寺田寅彦 「土佐の地名」
・・・ ヨーロッパの国々は、互に国境を地つづきの山や河、森の間にとなりあわせ、互の国語に共通な語源をもち、今日までの歴史のなかではヨーロッパのどの国もとなりの国におこる事件に対して、無関係ではあり得なかった。したがって、第一次大戦の前後も、こ・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・順序や語源や、比喩の釣合いに絶えず制御されていた分析的な考え方等は、バルザックが生きて、愛し、苦しんで、金銭のために焦慮しつづけた十九世紀前半の社会生活の現実の中に既に跡かたもないものである。サロンの代りにイギリス流のクラブが出来ている。花・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
出典:青空文庫