・・・ けれどもこれら巨細にわたった施設に関しては、札幌農科大学経済部に依頼し、具体案を作製してもらうことになっていますから、それができ上がった時、諸君がそれを研究して、適当だと思ったらそれを採用されたなら、少なからず実際の上に便利でしょう。・・・ 有島武郎 「小作人への告別」
・・・詩は、あきらめて、こんどは、三鷹の義兄に宛てた遺書の作製をこころみる。 私は死にます。 こんどは、犬か猫になって生れて来ます。 もうまた、書く事が無くなった。しばらく、手帖のその文面を見つめ、ふっと窓のほうに顔をそむ・・・ 太宰治 「犯人」
・・・ 作家たるもの、またこの現象を黙視し得ず、作品は二の次、もっぱらおのれの書簡集作成にいそがしく、十年来の親友に送る書簡にも、袴をつけ扇子を持って、一字一句、活字になったときの字づらの効果を考慮し、他人が覘いて読んでも判るよう文章にいちい・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・年じゅう人の行かない山の中でこうした生活をして、陸地測量、地図作製という文化的な基礎仕事に貢献しているのである。 測夫の一人はもう四十年も昔からこの仕事をつづけているそうで、北はカラフトから南は台湾まで足跡を印しない土地は少ないのだそう・・・ 寺田寅彦 「小浅間」
・・・こういう教案の作成に費やす時間があれば、むしろその時間に先生が、先生自身の題目の研究をした方がよいと思う。先生自身の研究の挿話は生きた実例としてどれだけ強く生徒に作用するか分らない。死んだ借り物の知識のこせこせとした羅列に優る事どれだけだか・・・ 寺田寅彦 「雑感」
・・・為政家が一国の政治を考究する時、社会経済学者がその学説を組み立てる時、教育者がその教案を作製する時、忘れずに少時このレコードの音に耳を傾けてもらいたい。あらゆる心と肉の労働者もその労働の余暇にこれらの「自然の音」に親しんでもらいたい。そうい・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
・・・なかに新聞記者が記事作成の上に加えられる不便をかこった科白がある。日独協定のことについて、書かれるべき感想は更に多くあるのであろうが、お定の記事が、一等国の大新聞社会欄をあれほどの場面で占め得るということは、その一面に何を暗示しているのであ・・・ 宮本百合子 「暮の街」
・・・にもかかわらず、現内閣は、よたつきながら、今倒れるか、今倒れるかと思われながら、とうとうモラトリアム公表という重大な危機さえ突破して、どういう工合に作成されたものか、一昨日には憲法改正草案を発表するところまでもち越して来ている。 私たち・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
・・・そして政府の放送事業法案にたいして、より具体的にラジオ民主化の可能性をもった放送委員会法要綱を作成した。 現放送委員会の放送委員会要綱は、原則として、国民生活の各面を代表する男女三十名から三十五名をもって構成する。さらにこの多数制の委員・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・特に、世界とその一環としての日本の文学が、質的に大きい変転を行い、波瀾を経つつある最近の「十年間あまり、国文学研究の中道が、殆どすべて本文校訂とか稿本作成とか、考証とか、索引作成とかいう資料整理的の仕事それ自体を目的とする範囲を出なかったこ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
出典:青空文庫