・・・「もう死にます。さよなら。」「まあもう一ぺんやりましょうよ。ハッハハ。さあ。お立ちなさい。起こしてあげましょう。よっしょ。そら。ヘッヘッヘ。」かたつむりは死んでしまいました。そこで銀色のなめくじはかたつむりをペロリと喰べてしまいまし・・・ 宮沢賢治 「蜘蛛となめくじと狸」
・・・もうさよなら。」タネリも高く叫びました。すると犬神はぎゅっとタネリの足を強く握って「ほざくな小僧、いるかの子がびっくりしてるじゃないか。」と云ったかと思うとぽっとあたりが青ぐらくなりました。「ああおいらはもういるかの子なんぞの機嫌を考えなけ・・・ 宮沢賢治 「サガレンと八月」
・・・ありがとう、じゃ、さよなら。」ペンキ屋徒弟退場。「申し。」爾薩待(居座いを直し身繕「はあ。」農民一(登場 枯れた陸稲「稲の伯楽づのぁ、こっちだべすか。」爾薩待「はあ、そうです。」農民一「陸稲のごとでも・・・ 宮沢賢治 「植物医師」
・・・「じゃ、さよなら。」「さよなら。」 三人の雪童子は、九疋の雪狼をつれて、西の方へ帰って行きました。 まもなく東のそらが黄ばらのように光り、琥珀いろにかがやき、黄金に燃えだしました。丘も野原もあたらしい雪でいっぱいです。 ・・・ 宮沢賢治 「水仙月の四日」
・・・「行くのかい。さよなら、えい、畜生、その骨汁は、空虚だったのか。」 タネリは、ほんとうにさびしくなって、また藤の蔓を一つまみ、噛みながら、もいちど森を見ましたら、いつの間にか森の前に、顔の大きな犬神みたいなものが、片っ方の手をふとこ・・・ 宮沢賢治 「タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった」
・・・「僕又来ますから、じゃさよなら。本はあげてきます。じゃ、さよなら。」狐はいそがしく帰って行きました。そして樺の木はその時吹いて来た南風にざわざわ葉を鳴らしながら狐の置いて行った詩集をとりあげて天の川やそらいちめんの星から来る微かなあかり・・・ 宮沢賢治 「土神ときつね」
・・・一向判らなかったんですね。さよならさよならってみんな叫びましたねえ。そしたら急にパッと明るくなって僕たちは空へ飛びあがりましたねえ。あの時僕はお日さまの外に何か赤い光るものを見たように思うんですよ。」「それは僕も見たよ。」「僕も見た・・・ 宮沢賢治 「楢ノ木大学士の野宿」
・・・ すると校長がいきなり、「ではさよなら。」というのです。そこで私も「これで失礼致します。」と云いながら急いで玄関を出ました。それから走り出しました。 狐の生徒たちが、わあわあ叫び、先生たちのそれをとめる太い声がはっきり後ろで・・・ 宮沢賢治 「茨海小学校」
・・・という文化人のダンス・パーティーである流行作家の夫人に「さよならダンス」というのを教え、その夫人は、「男も女もお辞儀して――とても気持がいい。なんか貴族になった気持で――。」と語っているのは、ヨーロッパの十八世紀ごろの宮廷の模様が映画などを・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・「じゃ私さっさと消えるわよ、さよなら」 ヴェランダの降口まで足早に去って、桃子はそこからもう一度こっちへ顔をふり向け、腹立ちより寥しい気分で遠ざかってゆくその姿を見送っていた多喜子に向って、手をふった。 シモーヌ・シモンがディア・・・ 宮本百合子 「二人いるとき」
出典:青空文庫