・・・大祭に参加後、すぐ六人ともカナダの北境を探険するという話でした。私たちは、船を下りると、すぐ旅装を調えて、ヒルテイの村に出発したのであります。実は私は日本から出ました際には、ニュウファウンドランドへさえ着いたら、誰の眼もみなそのヒルテイとい・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・多くの人々が、この問題の本質上、今日ではもう個人的解決の時期を全くすぎていて、これは人民的規模において、男女共通に、共通の方法に参加して、各種の管理委員会をこしらえて、自主的な圧力で改善してゆくことに決心したら、どんなに早く、解決の緒につく・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・あの苦しさ、あの思いを、女として全生活の上に蒙って来た日本の婦人が、今日、これから漸々そのことについて語り、生活のよりよい建設に参加する意志に立つ文学を生み出すことを、どうして期待せずにいられよう。私たちには言葉がある。今その言葉で、真実を・・・ 宮本百合子 「明日咲く花」
・・・ヘンリー・フォードが催したヨーロッパ早まわり競争に参加して、十日間に六千マイルを突破して一等になり、フォードより自動車を一台おくられたことがある。この早まわり競争の道づれも弟のクラウスであり、しかも早まわり記事を新聞におくり、あとから一冊に・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・ここには四万人の婦人たちが参加しています。印度では一九四六年に、民族解放のゲリラ隊によってテレンガン地方の五百万人の人口をふくむ二千五百の村々が解放され、はじめて民主的な人民の生活とはどういうものであるかを学びました。印度の婦人たちは、こん・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
・・・戦争の惨禍というものの人間的な深刻さは、侵略謀議者がどのように罰せられようとも、それでつぐないきれない人民生活の傷がのこされるからだ。人が人の命をうばうというおそろしい行為でその罪を罰したところで、東條英機の家族は、あしたのたつきにこまりは・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
・・・泉山蔵相のくだのなかで「新給与問題よりも山下春江女史の方がすきだということの方が問題だ」といったということが新聞にでていますが、これはなまよい本性にたがわず、本音でしょう。もちろんあとから本人にきけば「何もおぼえていない」でしょうが極東裁判・・・ 宮本百合子 「泉山問題について」
・・・分別のある人民の大部分が、この上の惨禍を歓迎しようとはしていない。 きょうこそ、日本のわたしたちは、自分たちの求めているものを、はっきり自覚しなければならないと思う。わたしたちの求めているのが民族の平和と自立であり、生活の安定と人間らし・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・ ところが十四年前日本の軍力が東洋において第二次世界大戦という世界史的惨禍の発端を開くと同時に、反動の強権は日本における最も高い民主的文学の成果であるプロレタリア文学運動をすっかり窒息させた。そして、日本の旧い文学は、これまで自身の柱と・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・ 市電では、一月に広尾の罷業を東交の篠田、山下等に売られてから全線納まらず「非常時」政策に抗して動揺しているのであった。 果して、昼ごろ髪をきっちり分けた車掌服の若い男が二人入って来た。一人が看守に住所姓名を云っている間に、他の一人・・・ 宮本百合子 「刻々」
出典:青空文庫