・・・あるいはヘブリウの ‘Esh‘as´en‘as´anなどが示唆され、これと関係あるアラビアの ‘atanaから西のほうへたぐって行ってイタリアの Etna 火山を思わせ、さらに翻ってわが国の Iduna を思わせる。しからばこれはセミティク・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・しかしどれほど色々の学者の研究の結果を調べてみても、私自身体験としての雷の観察から示唆されて日常に懐いている色々の疑問を満足に説明してくれるものは一つもない。そういう行きがかりで晩年自分が某研究所に入って自由に好きな研究の出来るという幸福な・・・ 寺田寅彦 「家庭の人へ」
・・・そうしてこれに関してはかなり多くの興味ある問題が示唆されるのである。 われわれの言語を言語として識別させるに必要な要素としての母音や子音の差別目標となるものは、主として振動数の著しく大きい倍音、あるいは基音とはほとんど無関係ないわゆる形・・・ 寺田寅彦 「疑問と空想」
・・・こんな事を考えてみるだけでもそこにいろいろなまじめな興味ある問題を示唆されるのであるが、その示唆の呪法の霊験がこの肉筆の草稿からわれわれの受けるなまなましい実感によっていっそう著しく強められるであろうと思われるのである。・・・ 寺田寅彦 「小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」」
・・・このはなはだ杜撰な空想的色彩の濃厚な漫筆が読者の中の元気で自由で有為な若い自然研究者になんらかの新題目を示唆することができれば大幸である。ただ記述があまりに簡略に過ぎてわかりにくい点が多いことと思われるが、そういう点についてはどうか聡明なる・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・は、やはり側面の裂罅からうかがわれる内部の灼熱状態を示唆的にそう言ったものと考えられなくはない。「八つの門」のそれぞれに「酒船を置きて」とあるのは、現在でも各地方の沢の下端によくあるような貯水池を連想させる。熔岩流がそれを目がけて沢に沿うて・・・ 寺田寅彦 「神話と地球物理学」
・・・ 誤解をなくするために断っておきたいと思う事は、左に地名と対応させた外国語は要するにこじつけであって、ただある一つの可能性を示唆し、いわゆる作業仮説としての用をなすものに過ぎないという事である。また例えばアイヌ語との関係を示しても、それ・・・ 寺田寅彦 「土佐の地名」
・・・と題されたことは、示唆的である。著者は、芥川龍之介の敗北の究明とともに、小市民的土壌を自身の生活に否定し、「過渡期の道標」では一歩前進した。「イデェオロギーが情緒感覚の生活にまで泌みわたって、これを支配し変革する」ことがなければプロレタリア・・・ 宮本百合子 「巖の花」
・・・発生的な萌芽として、新しい日本の人民生活の文学の端緒と、現代文学が私小説から脱却してゆく可能の方向及びこれからの日本文学が実質的に世界文学の領野に参加し、そこでになってゆくべき現実の性格などについて、示唆をふくんでいる。「播州平野」と「・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第七巻)」
・・・そしてそういう美の世界では、宗達が嘗つて人間を自在に登場させた可能が封じられて、おのずから波や花鳥、人生としては従のものが図案の主な題材とならざるを得なかったということも示唆にとんでいる。 秋声・藤村 藤村と秋・・・ 宮本百合子 「あられ笹」
出典:青空文庫