・・・それから縦い戦争に行くことが出来ても、輜重に編入せられて、運搬をさせられるかも知れないと思って見る。自分だって車の前に立たせられたら、挽きもしよう。後に立たせられたら、推しもしよう。しかし壮烈や爽快とは一層縁遠くなると思うのである。 あ・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・ そう云う美しい女詩人が人を殺して獄に下ったのだから、当時世間の視聴を聳動したのも無理はない。 ―――――――――――――――――――― 魚玄機の生れた家は、長安の大道から横に曲がって行く小さい街にあった。所・・・ 森鴎外 「魚玄機」
・・・お見忘になりましたか知れませんが、戦地でお世話になった輜重輸卒の麻生でござります。」「うむ。軍司令部にいた麻生か。」「はい。」「どうして来た。」「予備役になりまして帰っております。内は大里でございます。少佐殿におなりになって・・・ 森鴎外 「鶏」
・・・時代思潮に革命を起こし新時代の光明を彼岸に認めねばならぬ。「吾人は絶対に物質を超越し絶対に心霊に執着せざるべからず」。これを名づけて霊的本能主義と言う。四 浮世は住みにくい。ウルサイ人間とばかな人間との群れに悪党が出没して、・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫