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・・・ 慎太郎はしゃがむように、長火鉢の縁へ膝を当てた。「姉さんはもう寝ているぜ。お前も今の内に二階へ行って、早く一寝入りして来いよ。」「うん、――昨夜夜っぴて煙草ばかり呑んでいたもんだから、すっかり舌が荒れてしまった。」 洋一は・・・
芥川竜之介
「お律と子等と」
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・・・文鳥は軽い足を水入の真中に胸毛まで浸して、時々は白い翼を左右にひろげながら、心持水入の中にしゃがむように腹を圧しつけつつ、総身の毛を一度に振っている。そうして水入の縁にひょいと飛び上る。しばらくしてまた飛び込む。水入の直径は一寸五分ぐらいに・・・
夏目漱石
「文鳥」