・・・ 周知のとおり通俗ニュース雑誌、『ライフ』『タイム』『フォーチューン』『アーキテクチュラル・フォラム』等の諸週刊雑誌のほかラジオ・ニュースの放送などで、今日三千万人のアメリカ人にタイム社の影響を与えている男である。 去年の彼の収入は・・・ 宮本百合子 「微妙な人間的交錯」
・・・勤めている或る週刊新聞社は、赤坂の電車通りに面して建っていた。水色のペンキで羽目板を塗り、白で枠を取った二階建ての粗末なバラックであった。階下が発送部で、階上が編輯室だ。誰かが少し無遠慮に階段を下りると、室じゅうが震えるその二階の一つの机、・・・ 宮本百合子 「街」
・・・彼は週刊新聞、『労働者生活』を三ヵ月分予約した。 その労働者が立ってる定期刊行物見本テーブルは幾分土曜日夕方のハイド・パアクにおける言論市場をほうふつさせた。労働組合の機関紙、炭坑組合新聞などが党の刊行物とともに売られている。 ・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・ 四月二十三日の週刊朝日「菅証人はなぜ自殺したか」という記事は、特別調査委員会における速記録の一部をのせて、この悲劇の核心を照し出しています。 委員たちが、菅氏にしつこく、くい下った質問は、どれも常識をはずれたいいがかりと、・・・ 宮本百合子 「若き僚友に」
『婦人民主』が週刊紙として発刊されることになった。日本の明るい民主化のために、人口の半分どころか三百余万も多い婦人大衆が、どんなに重大な役割をもっているか。このことについては、婦人が急速に自覚しはじめているばかりでなく、心あ・・・ 宮本百合子 「われらの小さな“婦人民主”」
・・・予がこれに費した時間も、前後通算して一週間にだに足るまい。予がもし小説家ならば、天下は小説家の多きに勝えぬであろう。かように一面には当時の所謂文壇が、予に実に副わざる名声を与えて、見当違の幸福を強いたと同時に、一面には予が医学を以て相交わる・・・ 森鴎外 「鴎外漁史とは誰ぞ」
・・・しかし秀麿は寝る時必ず消して寝る習慣を持っているので、それが附いていれば、又徹夜して本を読んでいたと云うことが分かる。それで奥さんは手水に起きる度に、廊下から見て、秀麿のいる洋室の窓の隙から、火の光の漏れるのを気にしているのである。・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・ちょうど宅はベルリンに二週間ほど滞留しなくてはならない用事がありましたので、わたくしはひとりでその宴会へ参りました。夜なかが過ぎて一時になりましたころ、わたくしは雑談をいたしているのが厭になって来ましたので、わたくしどもを呼んで下すった奥さ・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「辻馬車」
・・・ここへ来ると、皆だれでも黙ってしまって問題をそらしてしまうのが習慣であるが、この黙るところに、もっとものっぴきのならぬ難題が横たわっていると見てもよかろう。 私は創作をするということは、作家の本業だとは思わない。作家の本業というのは、日・・・ 横光利一 「作家の生活」
・・・十一 一週間の後、小さな藁小屋が掘割の傍に建てられた。そこは秋三の家に属している空地であった。 その日最早や安次は自由に歩くことも出来なくなっていた。彼は勘次の家の小屋から戸板に吊られて新しい小屋まで運ばれた。 勘次・・・ 横光利一 「南北」
出典:青空文庫