・・・ O氏の主催で工業クラブに開かれた茶の会で探険隊員に紹介されてはじめて自分のぼんやりした頭の頂上へソビエト国の科学的活動に関する第一印象の釘を打ち込まれたわけである。 隊長シュミット氏は一行中で最も偉大なる体躯の持ち主であって、こう・・・ 寺田寅彦 「北氷洋の氷の割れる音」
・・・を主催した一人だというので検挙され、印刷工組合の組織に参加すると、もう有名になってしまって、雇ってくれるところがなくなっていた。仲間の小野は東京へ出奔したし、いま一人の津田は福岡のゴロ新聞社にころがりこんで、ちかごろは袴をはいて歩いていると・・・ 徳永直 「白い道」
・・・わたしは主人公とすべき或婦人が米国の大学を卒業して日本に帰った後、女流の文学者と交際し神田青年会館に開かれる或婦人雑誌主催の文芸講演会に臨み一場の演説をなす一段に至って、筆を擱いて歎息した。 初めわたしはさして苦しまずに、女主人公の老父・・・ 永井荷風 「十日の菊」
・・・現に花袋君の主宰しておらるる「文章世界」のごときも拝見しておらん。向後花袋君及びその他の諸君の高説に対して、一々御答弁を致す機会を逸するかも知れない。その時漱石は花袋君及びその他の諸君の高説に御答弁ができかねるほど感服したなと誤解する疎忽も・・・ 夏目漱石 「田山花袋君に答う」
・・・日清戦争の日本に於けるブルジョア文化の一形態であったキリスト教婦人同盟の主宰者として活躍した葉子の母の、権力を愛し、主我的な生き方に対して自然の皮肉な競争者として現われた娘葉子が、少女時代から特殊な環境の中で驚くべき美貌と才気とを発揮させつ・・・ 宮本百合子 「「或る女」についてのノート」
十月下旬行われた作家同盟主催の文学講習会のある夜、席上でたまたま「亀のチャーリー」が討論の中心となった。ある講習会員が「亀のチャーリー」をとりあげ、その作品は一般読者の間で評判がよく親しみをもって読まれたから、ああいう肩の・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ つづいて、私は或る機会で、文部省その他の役所の人々が集まってこしらえている「都市生活委員会」主催の「都市生活映画第一篇小学校」三巻を観た。主な監督者は飯田心美氏。委員制によってつくられた作品で、日本の小学校がどのように児童の衛生、学習・・・ 宮本百合子 「映画の語る現実」
・・・ この間うち新聞社の主催で大々的に行われたカメラ祭というものは、未曾有の催しであった。下岡蓮杖の功績が新しく人々の科学常識の間にとりいれられたのは結構であったし、カメラを愛好する若い人々にとって、ターキーの舞台姿のポーズをとられたのも、・・・ 宮本百合子 「カメラの焦点」
・・・ 国立出版所で組織したウラル地方の重工業生産地への見学団、ソヴェト作家団体総連合主催の工場、集団農場への文学ウダールニク。いずれの場合でも、ただ応募した作家たちが一まとめに派遣されただけで、各々の作家が、これまでどの産業に一番接近してい・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・十一月二十日に朝日講堂で神近さんの婦人文芸主催の文芸講演会では私の話がよろこばれ、私としても、あんなに身をいれて、わかりやすく、文学といっても一般化して云うことは出来ぬこと、文学を作るものの社会生活が反映して来ることを様々の作品の例をとって・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫