・・・ 藤原時代の経済は荘園制の上に立っていた。京都にいる貴族の所有地である荘園とそこの住民は荘園の主にまかされて、すべての生活必需品を現物で京都の貴族たちに収めなければならなかった。あらゆる貴重な織物もこうして荘園の女の努力からつくられた。・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・世界市場の争奪のため、危機にあった欧州の空気はその硝煙の匂いと一緒に、急速に動揺しはじめた。キュリー夫人は土用真盛りの、がらんとしたアパートの部屋でブルターニュの娘たちへ手紙を書いた。「愛するイレーヌ。愛するエーヴ。事態がますます悪化し・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・ 藤原時代の栄華の土台をなした荘園制度――不在地主の経済均衡が崩れて、領地の直接の支配者をしていた地頭とか荘園の主とかいうものが土地争いを始めた。その争いに今ならば暴力団のような形でやとわれた武士が土地の豪族の勢力と結んで擡頭して来て不・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・その手紙の内容は、ある田舎の荘園で、女主人は病弱なので家政婦が家事取締りしている。その助手と鶏舎の監督をする健康な飽きっぽくない若い婦人を求めているのであった。ジェーンは、その手紙をくりかえしてよんで考える。この手紙には何一つ特別珍しいこと・・・ 宮本百合子 「働く婦人の新しい年」
・・・けれども、私たちが生きているこの現代は、世界じゅうが一つの巨大なうごめきをしていて、硝煙の間で歴史が転換しつつある。経験というものはそういう時代になると、静的に解釈されれば何の力もないことになる。何故なら、去年あることがそうであったという事・・・ 宮本百合子 「ものわかりよさ」
・・・ 藤原時代は、支配階級の経済の基礎は、荘園制度であった。藤原氏は今日いう不在地主で、各地の大荘園は、その土地に住む管理者によって管理されていた。が藤原末期になるにつれて荘園の管理者が収穫をごまかしたり、農民の疲弊が甚しくなったりして財源・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫