・・・作品の世界は、幻想的と云われ、或は逞しき奔放さと云われ、華麗と云うような文字でも形容され、デカダンスとも云われ、あらゆる作品の当然の運命として、賞讚と同時の疑問にもさらされた。文学の作品として、かの子さんの幻想ならぬ幻想が、その世界として客・・・ 宮本百合子 「作品の血脈」
・・・を創造するということ」である、といわれている。 また、林房雄氏は「文学は復興する」の中で「囚われた大地」を称讚し「トルストイ、ドストイェフスキーの手法とともにその鋭く、はげしい精神をも正しくつたえているように思えるたしかな本格的な、小説・・・ 宮本百合子 「作家への課題」
・・・ しかし、作者としては、あくまでも初め自分がその作品によっていおうとしたことをどこまで云い遂せているかというところを動かぬかなめとして、賞讚も忠言をも摂取して行かなければなるまい。 私はこの夏、『中央公論』で森山啓氏の「プロレタ・・・ 宮本百合子 「作家への課題」
・・・の作者らしく、ジイドは、ゴーリキイやダビや、オストロフスキー、その他新社会の建設の中に生命を捧げた人々への無限の愛を表すために、自身のソヴェト旅行記をますます「いつもよしとして称讚したいものにたいして、最も厳格である」という自分の精神に従っ・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・けれども、此は私丈ではないと思う、どんな小さいことでも、芸術的の創作に力をそそぐ人は、彼等の作品を認められ、賞讚されたという場合に、仮令如何に其を押えようとしても押えられない嬉しさが来る。 有頂天にならないまでも、又、如何に謙虚に自分の・・・ 宮本百合子 「樹蔭雑記」
・・・等が与えられた称讚の性質も見遁せないものを持っている。先に文芸復興の声と共に流行した古典の研究、明治文学の見直し等が、正当な方法を否定していたために、新しい作家の新しい文学創造の養いとなり得なかったことを見て来たが、この過去への瞥見が谷崎、・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ 小さい娘に母は品川の伯父さんが、明治の日本へ初めて近代の皮革事業をもたらした見識を賞讚してきかせた。「謙吉さんが生きていてくれて、品川の伯父さんと一緒だったら、お母さまもどんなに安心だったかしれないのにね」とも云った。 謙・・・ 宮本百合子 「白藤」
・・・しかも、本質における逆流は時に称讚、拍手、とりまきの形で作家の身辺にあらわれる時代においておやである。〔一九三七年八月〕 宮本百合子 「数言の補足」
・・・このわざは、言葉のあやをかいくぐって連続的に行われているが、たとえばその足許の雲となっている一つの誤記が、誤記とわかってしまったとき、孫悟空の雲は消散して、さて一場のてんまつはどうなるだろう。 文学のことは、それについて話したいことを話・・・ 宮本百合子 「孫悟空の雲」
・・・近づいて画面を見ると、どれも蒔絵のように塗られていて、私はこういうのをも尚描くということが出来るのであろうか、塗上げ術の問題はあるとしても描法の問題はここには消散してしまっている、そのように感じたのであった。 日本画家たちの日常生活をも・・・ 宮本百合子 「帝展を観ての感想」
出典:青空文庫