-
・・・ この時以来私は松の樹のみならず、あらゆる植物に心から親しみを感ずるようになった。彼らは我々とともに生きているのである。それは誰でも知っている事だが、私には新しい事実としか思えなかった。二 私は高野山へのぼった。そうして・・・
和辻哲郎
「樹の根」
-
・・・酒粕に漬けた茄子が好きだというので、冬のうちから、到来物の酒粕をめばりして、台所の片隅に貯えておき、茄子の出る夏を楽しみに待ち受ける、というような、こまかい神経のくばり方が、種々雑多な食物の上に及んでいたばかりでなく、着物や道具についてもそ・・・
和辻哲郎
「藤村の個性」