・・・が、高梨書店から「信天翁」が出る筈です。「信天翁」には、主として随筆を収録しました。七月までには、みんな出るでしょう。 少し休みたいと思います。私はことし三十三であります。女の子がひとりあります。・・・ 太宰治 「私の著作集」
・・・ それでこの間この書物を某書店の棚に並んだ赤表紙の叢書の中に見附けた時は、大いに嬉しかった。早速読みかかってみるとなかなか面白い。丁度自分が知りたいと思っていたような疑問の解釈が到る処に出て来た。そして更に多くの新しい問題を暗示された。・・・ 寺田寅彦 「鸚鵡のイズム」
・・・残念ながらわが国の書店やデパート書籍部に並んでいるあの職人仕立ての児童用絵本などとは到底比較にも何もならないほど芸術味の豊富なデザインを示したものがいろいろあって、子供ばかりかむしろおとなの好事家を喜ばすに充分なものが多数にあった。その中に・・・ 寺田寅彦 「火事教育」
・・・向きの雑貨のほかに、一九三三年の東京の銀座にあると同じような新しいものもあるのである。書店の棚にはギリシア語やヘブライ語の辞書までも見いだされる。聖書の講義もあればギャング小説もある。 郵便局の横町にナンキン町がある。店にいて往来人をじ・・・ 寺田寅彦 「軽井沢」
・・・それだからなかなか一度や二度の訪問でこれだけの諸点を観察することは容易でない。然るに映画の場合では撮影者が長い時間とフィルムを費やして撮影した夥しい材料の中から、無駄なものを省略し、最も重要なものだけを選び出し、それを巧みに編輯してあるから・・・ 寺田寅彦 「教育映画について」
・・・ 今度小山書店から出版された「妖魔詩話」の紹介を頼まれて、さて何か書こうとするときに、第一に思い出すのはこの前述の不思議な印象である。従って眼前の「妖魔詩話」が私に呼びかける呼び声もまたやはりこの漠然とした不思議な印象の霧の中から響いて・・・ 寺田寅彦 「小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」」
・・・ 大きな書店の陳列棚をひやかしていると、実にたくさんの本がある。俳句の本、山登りの本、唯物論的弁証法の本、ゴルフの本、なんでも無いものはないように見える。ところが、何かしらある些細な題目についてやや確実詳細な具体的知識を得たいと思って参・・・ 寺田寅彦 「錯覚数題」
・・・今書店の店頭に立っておびただしい少年少女の雑誌を見渡し、あのなまなましい色刷りの表紙をながめる時に今の少年少女をうらやましく思うよりもかえってより多くかわいそうに思うことがある。 生まれて初めて自分が教わったと思われる書物は、昔の小学読・・・ 寺田寅彦 「読書の今昔」
・・・実際連句一巻の形式はソナタのごとき音楽形式とかなりまで類似した諸点をもつのである。連句が全体を通じて物語的な筋をもたないから連句は低級なものであると考えるのは、表題音楽が高級で、ソナタ、シンフォニーが低級であるというのと同様である。連句は音・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・これは一見はなはだしく奇抜な対比のように聞こえるであろうが、しかし自分が以下に述べんとする諸点を正当に理解される読者にとってはこうした一見奇怪な見方が決して奇怪でないことを了解されるであろうと思われる。 日本人のこうした自然観がどうして・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
出典:青空文庫