・・・実際に著者は、この第二篇で追究した諸点を文芸評論家としての自身の評価のよりどころ、評価の方法として、他の諸篇にふくまれた労作をなしとげている。文芸思潮史としてこの一巻をまとめることを念願したとあとがきに書かれているが、批評及び文芸思潮史の方・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・ ジイド自身にもしこれらの諸点が分っていたらU・R・S・Sの民衆の持っている幸福の可能の現実的根拠、社会生産関係の上での歴然たるよりどころを見のがしはしなかったであろう。ロシアの民衆が過去にもっていた歴史的な桎梏の性質と、今日の事情との・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・彼女の書店で、若しか一人若い筆の立つ女を助手として入用ではないだろうか。彼女自身役に立てる道はなくても、同じ仕事の他の方面を分担している人々が、万一需めているかもしれない。――「ああ、それが好い、あなた××の古い出の方で×夫人という方―・・・ 宮本百合子 「沈丁花」
二ヵ月ばかり前の或る日、神田の大書店の新刊書台のあたりを歩いていたら、ふと「学生の生態」という本が眼に映った。おや、生態ばやりで、こんなジャーナリスティックな模倣があらわれていると半ば苦笑の心持もあってその本を手にとってみ・・・ 宮本百合子 「生態の流行」
・・・ 同志藤森、林の批判の批判は、それらの諸点をこそ明らかにすべきであった。批判によって、筆者と大衆とを高めてこそ「批判の批判」たり得るのである。 もし又、中條の批評が右翼的偏向との闘争をとりあげたそのことにおいて誤っていると考えられた・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・数十名の弁護人ならびに三分の二の傍聴人により法廷を制圧している等の諸点をあげて示威した。 裁判長「法廷を制圧しているとはどんな意味か。」 川口検事「多数を占めているとの意味です。」 裁判長「制圧しているとは不穏当であるからとり消・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・ それまで漠然とある小説なら小説を読んでいた人は、その小説に対するそういう批評を見て、はじめて、その小説の社会における客観的な意味を理解する場合があるだろうし、作者自身もまた、それまでは自覚しなかった諸点を、その批評によって自身の社会的な認・・・ 宮本百合子 「近頃の感想」
・・・一、小山書店が、「チャタレー夫人の恋人」につけた読書調査のアンケートは、こんにち小山書店が、この本の文学性を強調して、たたかうについて、果してふさわしく且つ有効なクレイムをもつものでしょうか。「この作品は発表にあたり全世界の・・・ 宮本百合子 「「チャタレー夫人の恋人」の起訴につよく抗議する」
一 情報局、出版会という役所が、どんどん良い本を追っぱらって、悪書を天下に氾濫させた時代があった。日配が、それらのくだらない本を、束にして、配給して各書店の空虚な棚を埋めさせた。今から三年ばかり前・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・ この際、同志小林多喜二の業績の評価に当って基準となるべき諸点を概括し、それによって、誤謬を含む見解を正すとともに、評価を統一することは、わが「コップ」中央協議会の責務の一つであると信じる。プロレタリア文化・文学運動の今後の正しい発展は・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価に寄せて」
出典:青空文庫