・・・一層解って貰えるように、一層、心に入り易いように、先日話した諸点を、又繰返すほかないのである。 二人は陰気な心持で、夜店の賑やかな肴町の大通りを抜けた。 H町の通りは、相変らず暗い。ずっと右手に続いた杉林の叢の裡では盛に轡虫が鳴きし・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・プロレタリア文学における大衆性の理解、人間性というものについての理解、民族の文学に対する理解、それらの重要な諸点は、これまでのプロレタリア文学理論の中で勿論基本的に健全にとりあげられてはいたが、個々の作家の生活感情の中へまで、新時代の作家的・・・ 宮本百合子 「プロ文学の中間報告」
・・・それは、明治二十何年という時代、三宅花圃、田沢稲舟などという婦人が、短篇小説を当時の文芸倶楽部にのせた時、出版書店は御礼として半衿一かけずつを呈上したということである。 現在、壮年になっている作家たちが、他の職業にたずさわる同年輩の男の・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・ 本部の会議の席上いわれた書記長の発言を要約すると大体左の諸点のようです。一 宮本百合子の作品は大衆によまれていない。書記長は三行以上よめない。階級性がなくて多面性がない。観念的である。二 宮本百合子は、ごうまんで天狗になっ・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・私たちは読者として、そういう諸点については今日好意ある節度を守るのであるが、山本氏として、この作者の立て前とする範囲内で、而も、允子の棲んでいる世間並のいいこと、わるいことの評価と、允男の行動に対する歴史的な意味についての無理解とが、世俗的・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・ これらの遺憾な諸点にかかわらず、この一篇は、有益でもあり、示唆に富む作品である。翻訳も流暢と云えないまでも、忠実にされていることがわかる。「支那ランプの石油」その他この作者の作品を読んで見たいと思わせる作品である。 注意をひかれる・・・ 宮本百合子 「「揚子江」」
出典:青空文庫