・・・予は自分で雨戸をくり、自分で寝具を片づけ、ぼんやり障子の蔭に坐して庭を眺めていた。岡村は母屋の縁先に手を挙げたり足を動かしたりして運動をやって居る。小女が手水を持ってきてくれた。岡村は運動も止めて家の者と話をして居るが、予の方へ出てくる様子・・・ 伊藤左千夫 「浜菊」
・・・“Life is such a thing”という言葉がある。ふち飾りである文学が、人類の歴史の進歩に大きく作用する力はなかった。十九世紀のイギリスのロマンティシズムがレルモントフに影響し、サッカレーやディケンズのリアリスムがトルストイなど・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・十月十日、出獄した同志たちは、治安維持法撤廃によって解体する予防拘禁所から、すぐ生活に必要な寝具、日用品、食糧、家具などをトラックにつみこんで、ここへ引越して来た。 重吉が網走からもってかえって来た人絹の古い風呂敷包みの中には、日の丸の・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・六ヵ月の間に病院の料理場と洗濯場とは改良され、本国からの積送品を整理するための政府の倉庫ができ、病兵の寝具類は煮沸器で消毒されるようになった。彼女が病兵にもスープ、葡萄酒、ジェリーなどが必要だといったとき、役人たちはお話にならぬ贅沢だ! と・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
出典:青空文庫