・・・即ち、横光利一、小林秀雄、河上徹太郎、阿部氏その他日本の新興芸術派の人々が、この年月「高邁なる精神」と日本語に表現して身につけて来た生活と思想との核心的ポーズは、そのまま「行動主義」のニイチェ的なるものとしてあらわされている。更にフェルナン・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・そして、雑誌を廃刊し、また経営不振におちいった出版社は、ほとんど戦後の新興出版社であり、「老舗はのこっている」。 出版不況は、戦後の浮草的出版業を淘汰したと同時に、同人雑誌の活溌化をみちびき出している。「先輩たちが同人雑誌を守って十年十・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・秋田雨雀、小川未明等の若い作家たちは、新たに起ったこの文学的潮流に身を投じ、従来の作家の生い立ちとは全くちがった生活の閲歴を持った前田河広一郎、中西伊之助、宮地嘉六等の作家たちと共に平林初之輔その他が新興文学の理論家として活動しはじめた。前・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・そして、この新興日本にふさわしい大啓蒙学者は青年のような英気をもって、「夫れ女子は男子に等しく生れて」という冒頭の一句から全篇二十三ヵ条にわたって真に心と肉体の健やかで人間らしい娘、妻、母を生むために必須な社会向上の要点を力説しているのであ・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・人民を犠牲とする戦争に金を出すことで一層儲かった者が日本人の中にいて、その利益に立ってことが運ばれたからにほかならない。新興財閥はすべて軍需企業家であった。集中排除法は、そういう企業とその経済力に向けられたものであった。それが緩和されるとき・・・ 宮本百合子 「正義の花の環」
・・・しかし、同じ戦敗のドイツの中でも、そしてあの世界史的なドイツのインフレーションの中でも、第一次大戦によって軍需成金となった新興財閥は存在した。それら一握りの新マーク階級の人々は彼等の特権にとって有利でない人民的な生産様式にドイツの社会が進化・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・ 昨夜深更まで碁を打っていた隣室の客、もう朝飯を食べている声がする。Y、切なそうな顔つきで枕についたまま、「――あなた一人で行って」と云う。私が服装を整えたり、食事をしたりするのを、片寄せた床の中から、風邪引きの子供のように・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・ 今はそれでいいとし、然し五ヵ年計画が終って、いろんな仕事が一段落ついたら、丁度東京の新興事業が終ったと同時に失業者がましたように、ソヴェト同盟にも亦、うんとあぶれものが出来るんじゃないか? その心配は、ソヴェト同盟では不用だ。ソヴ・・・ 宮本百合子 「なぜソヴェト同盟に失業がないか?」
・・・○デーニギ 電報が来るまで待って居てよろしい? 私銀行へ若しかしたら行きません。○リリオム いいでしょう?○新興芸術では、チェッコ・スロァキア注目に価すると思った。行きましょうね? 一九二八年九月四日〔マクシ・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
・・・そして、日本民族の運命を破滅させた戦争によって財を蓄え、社会的地位をのしあげた新興階級――漱石はこういう社会層を成金とよんだ――の子弟達が、人間となった天皇の子息とひとつ学校に入れるという親の感激によって、入学して来ているということ。学習院・・・ 宮本百合子 「日本の青春」
出典:青空文庫