・・・を設定して、新人の登場を励ました。文芸春秋社主催の芥川賞、直木賞。文学界賞、三田文学賞、池谷信三郎賞等。やはりこれも時代の特徴の一つとして数えられることは、これらの「賞」を与えられた石川達三、高見順、石川淳、太宰治、衣巻省三その他多くの作家・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・次回の総選挙は、そういう意味で極めて重大、深甚な意義を日本の将来の可能性に向ってもっている。今日、人民生活を建て直すために、民主主義はどうしても確立されなければならない。世界的諸関係の中に日本をおき、公の観点から洞察し、心から祖国を愛する者・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・そして、これらのことはジイドがその前書の中で予見していたよりも深甚な反動としての影響を今日の人類の運命と文化の発達の上に明にマイナスなものとして、与えないとは決して云えない。ジイドとして、その結果については思うように思わしめよ、と云うには、・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・ まったく、「バクロウが牛の掘り出しものでもさがすように」新人が売り出された。現代文学の素質は戦後になってから戦時中の荒廃をとりもどすどころか、実名小説にまで低下して来た。一九三三年に石坂洋次郎が、左翼への戯画としてかいた「麦死なず」と・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・ 一体にアイヌは信心深く、山に行って猟をする時も畑を作る時も、地面を掘る時も、先ずイナオを立てて私共に飲水をお与え下さいとか穀物のよく実るようにとか云って、熱心に祈祷をいたします。けれども、イナオを取扱ったり祈祷をするのは、総べて男子の・・・ 宮本百合子 「親しく見聞したアイヌの生活」
・・・ 困難な新進の道 芥川賞を得た小田嶽夫・鶴田知也「二新人に訊く」という題で『三田新聞』に小田嶽夫氏の書いている文章をよみ、それと腹合わせに「創生記」を読み、私は鼻の奥のところに何ともいえぬきつい苦痛な酸性の刺戟・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・高見順と共に新人として登場した丹羽文雄の作品などもその世界に生きる人間群の現実的な生活のモティーヴだの動向だのという面からの観察は研ぎ込まれていず、人物の自然発生な方向と調子に従って、ひたすらその路一筋を辿りつめる肉体と精神の動きが跡づけら・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ 文学の世代的な性格に即して云えば、石川達三、丹羽文雄、高見順などという諸作家が新進として登場した当時、一時代前の新進は女に捨てられたり失恋したりして小説をかいて来ていたものだが、現代の新人は反対に女を足場にして登場した、ということが云・・・ 宮本百合子 「職業のふしぎ」
・・・『文学評論』の新人座談会の記事は二様三様の意味をふくんで非常に興味あるものであった。今日新しくプロレタリア文学の活動を開始した有能な人々が、どのくらい、文学の特殊的な技術の問題について、その微細な点にまで具体的探究をすすめようと努力して・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・ベス・プリゾールヌイの一人であったということには深甚な意味がある。ソヴェト同盟の社会がベス・プリゾールヌイのために「子供の家」を建設し、彼らの人間性の尊貴と有能性とを腐敗から防衛したことは、映画芸術で「人生案内」の感動的作品を生む動機ともな・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
出典:青空文庫