・・・今度新潮賞をうけることになったことや、それにつれてまた新しく『暦』の書評が書かれたりすることについて、壺井さんはどんな感想をもつだろうか。少し極りのわるい顔つきになって、何だか妙ねえ、というだろう。そして、心の中で、貰う賞金をいろんな子供や・・・ 宮本百合子 「『暦』とその作者」
・・・ 一九四六年に組織された現在の放送委員会は日本のラジオの民主化にたいして負わされた責任において、慎重に政府案を検討した。公聴会も開いた。そして政府の放送事業法案にたいして、より具体的にラジオ民主化の可能性をもった放送委員会法要綱を作成し・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・『新潮』十二月号には数人の作家たちが問いに答えて「転換期における作家の覚悟」という文章を書いている。それぞれにその作家の今日の心持が語られているわけなのだが、作家としての特徴を生かすことを語っている徳永直氏の文章が具体的で、わかりよかっ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・ 文化一般における上述のような意味深長な亀裂は、翌一九三七年に独特な展開を示すものとなったが、このことは当時文学の面に複雑な角度をもって投影した。純文学の行き詰りが感じられ、私小説からの脱出が望まれているのは前年来のことであるが、その脱・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・過去の文学運動のプラスとマイナスとに対する慎重な反省から目を逸らさせ、真面目な再吟味の根気を失わせられたことは、それらの作家たちが過去において率直に傾け示した自身の努力、人間的善意の価値に自信を失わせる結果となり、従って、プロレタリア文学運・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 私はこの小説の作者が、感化院の園児の脱走という、最も特徴的な、心理的な生活の面を、もっと慎重に突き入って注目しなかったことを残念に思うのである。 感化院の生活を強いられている少年が、そこにいたたまらず脱走しようとする。そして、やっ・・・ 宮本百合子 「作品のテーマと人生のテーマ」
・・・今日はその危険に対する自他ともの慎重な戒心が決して尠くてよい時期ではないのである。〔一九三七年十月〕 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・其処で、智的で洗練された情緒の所有者である米国の女性は、正当に伸張された法律的、政治的権利を保有して、健全な美くしい肉体と倶に、総ての国家的文明に貢献して居ると申す事になるのでございます。 私は決して、此の言を絶対に否定は致しません。然・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・自然主義の系統から出発して、雑誌『新潮』によりながら、作品活動としては大衆作家として存在しているこの人が、文学の芸術性、その至上性というものについての論議に触れると常にピューリタン的な擁護者として立ち現れることは、一つの芸術の分野ならでは見・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ 二ヵ月ばかり前の『新潮』に同じ作者の「伊豆日記」というのがあった。伊豆の温泉での文壇交友日記のようなものであるが、その中に、「プチット・ファアデットを読む。この小説は自分には不満だ」とあり、その不満の理由として、ジョルジュ・サンドが、・・・ 宮本百合子 「生産文学の問題」
出典:青空文庫