・・・久野は丹後の国において幽斎公に召し出され、田辺御籠城の時功ありて、新知百五十石賜わり候者に候。矢野又三郎介錯いたし候。宝泉院は陣貝吹の山伏にて、筒井順慶の弟石井備後守吉村が子に候。介錯は入魂の山伏の由に候。 某はこれ等の事を見聞候につけ・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書」
・・・夢を見ているように美しい、ハムレット太子の故郷、ヘルジンギヨオルから、スウェエデンの海岸まで、さっぱりした、住心地の好さそうな田舎家が、帯のように続いていて、それが田畑の緑に埋もれて、夢を見るように、海に覗いている。雨を催している日の空気は・・・ 著:ランドハンス 訳:森鴎外 「冬の王」
・・・心敬はこの人を、行儀、心地ともに独得の人としてほめている。よほど個性の顕著な人であったのであろう。そうしてこの禅の体得ということも、日本文化の一つの特徴として、今でも世界に向かって披露せられている点である。そうしてみると、これらの三つの点だ・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫