・・・従ってそれから判断してその日の低気圧の進路のおおよその見当をつける事が可能になるのである。 気象に関係のありそうなのでは「たぬきの腹鼓」がある。この現象は現代の東京にもまだあるかもしれないがたぶんは他の二十世紀文化の物音に圧・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
・・・初の南々西の風が発火後その方向を持続しながら風速を増大したのであったらおそらく火流は停車場付近を右翼の限界として海へ抜けてしまったであろうと思われるのが、不幸にも次第に西へ回った風の転向のために火流の針路が五稜郭の方面に向けられ、そのために・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・もし我々が小説家から、人間と云うものは、こんなものであると云う新事実を教えられたならば、我々は我々の分化作用の径路において、この小説家のために一歩の発展を促されて、開化の進路にあたる一叢の荊棘を切り開いて貰ったと云わねばならんだろうと思いま・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・彼の心の中にどっしりと腰を下して、彼に明確な針路を示したものは、社会主義の理論と、信念とであった。「ああ、行きゃしないよ。坊やと一緒に行くんだからね。些も心配する事なんかないよ。ね、だから寝ん寝するの、いい子だからね」「吉田君、・・・ 葉山嘉樹 「生爪を剥ぐ」
・・・に関する者をして、かねて政事の権をとらしむるが如きは、ほとんどこれを禁制として、政権より見れば、学者はいわゆる長袖の身分たらんこと、これまた我が輩の祈るところにして、これを要するに、学問をもって政事の針路に干渉せず、政事をもって学問の方向を・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・人生の風波の間に、自分という可愛い小舟をホンローさせず、人間、女として自身の進路を見出してゆかなければならないと思います。 どうか皆さま、お元気に。よろこびが、あなたの前途にみちているように。苦しみと悲しみがあなたを囲んだとき、涙の・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
・・・ 中断されたこの時期に、評論集としては、『昼夜随筆』『明日への精神』『文学の進路』などが出版されている。『文学の進路』のほかの二冊の評論集にも、文学についてのものがいくらかずつ収められていた。 この選集第十一巻には、四十二篇の文芸評・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・総選挙という方法は民主の方法であろうが、その方法を通じて反映された今日の日本の現実は、どんなに国内の保守の権力が根づよく、組織的で、日本が民主化して行こうとする進路をふさいでいるかという事実が、外人記者の観察にもはっきり語られたのである。総・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・同じころ、創作のためには非常に無理だった条件のなかで、しかも小説をかく必要があったとき、佐多稲子が「進路」という一篇をまとめたことは、彼女の作家的閲歴としてもプロレタリア文学史にとっても意味ふかいことであった。一人の労働者の若者を主人公とし・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・「進路」でも作者と主人公がくっついていたが、そういうところがあるといね公が云って居ました。直子さんにきょう郵便局のところで会ったら感心しましたと云われ、私は、いろいろ問題があるでしょうがと挨拶せざるを得なかったわけです。季吉さんたちから左向・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫