・・・「爺※たったら。」「そだら撲だぐじゃぃ。いいが。」嘉ッコの兄さんが向うで立ちあがりました。おじいさんがそれをとめ、嘉ッコがすばやく逃げかかったとき、俄に途方もない、空の青セメントが一ぺんに落ちたというようなガタアッという音がして家は・・・ 宮沢賢治 「十月の末」
・・・「生憎ただ今爺が御邸へまいっていてはっきり分りませんが――賄は一々指図していただくことにしませんと……」 忠一が、「それはそうだろう」といった。「賄は別の方がいいさ、留守の時だってあるんだから」「さよです」「座敷・・・ 宮本百合子 「明るい海浜」
・・・ ところで、この『集団行進』をよんでも思うことは、時事問題を芸術として扱うことの必要と同時についておこるその難しさです。ソヴェトの建設について「思想も統制」されることについて、私たちの日常生活は切れない影響をうけているのだから、それらは・・・ 宮本百合子 「歌集『集団行進』に寄せて」
・・・ ブロンドの背の高い、両肩の少し曲った眼なざしに極度の優しみを湛えている卓抜な科学者ピエールは、その父親と違って不断は時事問題などに対して決して乗り出さなかった。「私は腹を立てるだけ強くないんです」と自分からいっていたピエールが、ド・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・或る頁には日記のようなものが書いてあり、或る頁にはいろいろの絵が細かく万年筆で描いてある。時事漫画に久夫でも描きそうな野球試合鳥瞰図があると思うと、西洋の女がい、男がい、それぞれに文句が附いているのであった。「晴れて嬉しい新世帯」都々逸のよ・・・ 宮本百合子 「高台寺」
・・・ これまで社会問題をあまり扱わなかったN・R・Fさえ時事問題をあつかわざるを得ない情勢におされ、広汎な反ファシズム文化運動の一翼につらなったのであった。が、アンリ・バルビュス、ルイ・アラゴン、トリスタン・ツァラ、クウチュリエその他によっ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 新聞 新聞は今、『時事』と『日日』と『報知』と、それに芝居のことを知りたいために『都』と、都合四つとっております。それらの紙面で先ず目をつけるのは社会欄です。社会記事から創作の材料を得たことは一度もありません・・・ 宮本百合子 「身辺打明けの記」
・・・七日の時事その他は、技術畑出身の地味な性格の下山氏が、その性格をかわれて六月に総裁となり、こんどの十六万人の整理問題について、非常に苦慮していた。「切ないがわが道をゆく」、「部下への思いやりに苦しむ」という記事は、下山氏の人間ぽさを、わたし・・・ 宮本百合子 「「推理小説」」
・・・ 同志貴司山治が『時事』に書いた文芸時評中にも、この作品を形象化の欠如という点からだけ批判し、「蟹工船」以後の発展、特に去年四月以後同志小林が行った本質的飛躍については触れていない。 同志小林が最近十ヵ月間の実践によって理論家と・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価によせて」
・・・政治・経済・時事問題に関する解説的記事とともに、『婦人戦旗』に持たなかった相談欄・言葉の欄・家庭婦人のための「重宝ノート」などまで『働く婦人』には包括されている。数多のブルジョア婦人雑誌がそれを共通な特徴として婦人大衆の日常的な要求に訴えて・・・ 宮本百合子 「婦人雑誌の問題」
出典:青空文庫