・・・著者にそれを自省する力がないならば、せめて読むものとしてわたしたちは、このように非人間で苛烈な生のたたかいが女性の上や子供の上に強いられる戦争そのものこそ絶滅されなければならないと抗議せずにいられない。 東大協同組合出版部から、『きけわ・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・文学と大衆との無批判性、大人の文学、文学における日本的なものの強調等は、文学の全体としての健全な発展のために自省され、再評価されるべき範囲を脱し、文学を論じつつ、その論調を文学以外の規準で律するような危険を示して来た。批評文学は、昨年既に批・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・成し、新感覚派の時代から自然主義的、現実主義的文学方法に絶えざる反撥をつづけて来た横光利一、川端康成、佐藤春夫その他、市井談議一般に倦怠し、同時にリアリズムを更に高めゆく歴史的努力への根気をも失いつつ時世の荒さにもまれている多くの作家が、こ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ワグナーがオペラをプロシア皇帝の治世の具として自薦したとき、はっきりそのことを云った。それでニーチェは、ワグナーと絶交したのだった。〔一九五一年一月〕 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・ 新聞と異常で衝撃的なニュースとを結びつけて期待しているような不幸な近代の都会神経を、購読者の側からも自省しなければならないと云われたのもあたっている。それにつられて御丁寧にも金権政治工作に毎日を買いわたしてしまっているのは、ほかならぬ・・・ 宮本百合子 「ジャーナリズムの航路」
・・・もし人民が、現在日本政府は武力をもっていないという公の建前を無視して動けば、政府は、連合国勢力に誇大的訴えとして、人民に自治自制する能力なし、と実証し、反動に一歩前進しようと試みるであろう。人民の力の表現である真に民主的な政党は、治安維持法・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
・・・また、作者自身が、賢く第三者の評言をうけいれて、そのマイナスの意味をもつ特徴は自分が育って今も住んでいる東北地方の陰鬱な風土の影響であろうと自省しているところに、この問題を真に文学上発展させるモメントの全部があるとも考えられない。 なぜ・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・ こう解釈しても大してまちがいないと思うのは、この作品で主人公の深見進介が、なにかのモメントで、いつもくりかえし自省している一つのことがあります。それは、自己完成の願望の純粋な発露と、保身的な我執との間を、自身にたいしてきびしく区別しよ・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
昨今の複雑で又変動の激しい世相は、一方に真面目な歴史研究への関心を刺戟しているが、若い婦人たちの間にも、益々多岐多難な女性の日常生活についての自省とともに、人類の長い歴史の消長のなかで女はどのような社会的歩きかたをして来た・・・ 宮本百合子 「先駆的な古典として」
・・・ ところで、ここに私たちの注意をひき且つ周密な自省を求めている一つのことがある。それは、文化面をもひきくるめてのこういう誤った全体主義の見かたが、どうして今日大衆の進歩的な部分、知識人の進歩的な部分によって、それが当然受けるべきだけ・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
出典:青空文庫