・・・ 桑木博士と対話の中に、蒸気機関が発明されなかったら人間はもう少し幸福だったろうというような事があったように記憶している。また他の人と石炭のエネルギーの問題を論じている中に、「仮りに同一量の石炭から得られるエネルギーがずっと増したとすれ・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・そして「蒸気の噴出が増したから見ろ」と言うのだが、私にはいっこうなんの変わりもないように思われた。すると彼はそことはだいぶ離れた後方の火口壁のところどころに立ち上る蒸気をさして「あのとおりだ」という。しかし松明を振る前にはそれが出ていなかっ・・・ 寺田寅彦 「案内者」
・・・ 実際には、監督の人によっては、かなりにルースな方法による人はあるであろうが、原則としてはともかくも上記のごとき有機的に制定された道筋を通らなければ一編の有機的な映画はできるはずはないのである。いわゆる「カフスに書いた覚え書き」によって・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・たとえその描写がどんなに史実的に間違っていても、それが上記のような幻想を起しさえすればそれでこの映画は成効しているであろう。 この映画にはうるさいところやしつっこいところがなくてよい。やはり俳諧のわかるフランス人の作品である。 ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感6[#「6」はローマ数字、1-13-26]」
・・・ ルネ・クレールという作者の意図がどこにあるかはもちろん知るよしもないが、この発声映画は上記のような意味において私に発声映画というものの一つの可能性を教えてくれたものである。この先駆者の道を追って行けば日本語トーキーで世界的なものを作る・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・しかし上記のトーキーに出て来る二つの合唱だけに比べても実になんという貧しさであろう。 これはトーキー作者の問題であると同時に、国民全体の音楽的生活に関する問題でもある。 十六 ある夜の出来事 ゲーブルとコルベール・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・ 最近にはまた上記のものとは種類のちがった珍しい錯覚を経験した。それはこうである。ベルクナー主演の「女の心」の一場面で食卓の上にすみれの花を満載した容器が置いてある、それをアリアーネが鼻をおっつけて香をかいだりいじり回したりするのである・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・それでもし虻が花の蕊の上にしがみついてそのままに落下すると、虫のために全体の重心がいくらか移動しその結果はいくらかでも上記の反転作用を減ずるようになるであろうと想像される。すなわち虻を伏せやすくなるのである。こんなことは右の句の鑑賞にはたい・・・ 寺田寅彦 「思い出草」
・・・寺石氏はこのジャンの意味の転用に関する上記の説の誤謬を指摘している。また終わりに諏訪湖の神渡りの音響の事を引き、孕のジャンは「何か微妙な地の震動に関したことではあるまいか」と述べておられる。 私は幼時近所の老人からたびたびこれと同様な話・・・ 寺田寅彦 「怪異考」
・・・これに反して曇天では、輻射の関係で上記の原因が充分に発達しない、のみならずそれが低気圧などの近づいた場合だと、この影響として現われる風がこのような地方的の風に干渉していわゆる海陸風の純粋な発達を隠してしまう。しかし、そのような場合でも詳細に・・・ 寺田寅彦 「海陸風と夕なぎ」
出典:青空文庫