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・・・古人が客観に動かされたる自己の感情を直叙するは、自己を慰むるために、はた当時の文学に幼稚なる世人をして知らしむるために必要なりしならん。これ主観的美の行われたるゆえんなり。かつその客観を写すところきわめて麁鹵にして精細ならず。例えば絵画の輪・・・
正岡子規
「俳人蕪村」
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・・・ そのなりゆきを序す筆の達者さ、巧な人物の描写法、活用法に一つ一つ独立させて、異った時に読めばあきる事をしらないのである。 いかにも、上手に書かれてあると思う。 けれ共、二つ三つと、よし異った形式、事柄でも、よんで居るうちに何と・・・
宮本百合子
「紅葉山人と一葉女史」