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・・・立居振舞が如何にも大風で、鳥なき里のこうもりの人望を一身に集めて居る医者は、ゆっくりゆっくり、亀の尾を打った拍子にひどく脳に響いて熱が出たのだからそう大した事はないと云って下熱剤を置いて行ってしまった。 火の玉の様になった栄蔵のわきで手・・・
宮本百合子
「栄蔵の死」
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・・・ でもね、私達が小石川に居た所のそばにもう六十位の眼明きの御琴の御師匠さんが居ましてね、 かなり人望があって沢山の御弟子が居るんで『おさらい』だなんて云うと随分はでにしてました。 それがね何でも夏の中頃だと思ってましたけど一晩の・・・
宮本百合子
「千世子(三)」