・・・当時R研究所での仕事に聯関して金米糖の製法について色々知りたいと思っていたところへ、矢島理学士から、西鶴の『永代蔵』にその記事があるという注意を受けたので、早速岩波文庫でその条項を読んでみた。そのついでにこの書のその他の各条も読んでみるとな・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・ 墨の製法を書いた本はないかと思って気をつけて見たが、なかなか見つからない。化学的染料塗料色素等に関する著書はずいぶんたくさんにあるが、古来のシナ墨、それは現在でもまだかなりに実用に供されているあの墨の詳しい製法を書いたものは容易に見つ・・・ 寺田寅彦 「錯覚数題」
・・・いちばん目に止るのは足の方の鴨居に笠と簑とを吊して笠には「西方十万億土順礼 西子」と書いてある。右側の障子の外が『ホトトギス』へ掲げた小園で奥行四間もあろうか萩の本を束ねたのが数株心のままに茂っているが花はまだついておらぬ。まいかいは花が落・・・ 寺田寅彦 「根岸庵を訪う記」
・・・伯母に貰った本で火薬の製法を知り、薬屋でその材料を求めて製造にかかっているところを見付かって没収された話もある。 一八五二年すなわち十歳のとき学校へ入るために Eton に行ったが、疱瘡に罹りまた百日咳に煩わされたりした。それで Wim・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
・・・「歯車」「西方の人」「河童」等の作品によく現れて居る。且つ彼はそのエッセイにも、ニイチェの標題をそのままイミテートして「文芸的な、あまりに文芸的な」と書いた。特に「歯車」と「西方の人」の中には、ニイチェが非常に著るしく現れて居り、死を直前に・・・ 萩原朔太郎 「ニイチェに就いての雑感」
・・・第一、ドンコは南方の魚で、日本では大体、琵琶湖から西方のみに棲息している。ダボハゼに似ているので、関東方面でもドンコを見たという人があるけれども、学問的にもいないことが証明されている。 魚の辞典を引いてみると、ドンコはドンコ属という独立・・・ 火野葦平 「ゲテ魚好き」
・・・けれどもなにぶん、しばらくすたれていたものですから、製法も染方も一向わかりませんでした。そこで県工業会の役員たちや、工芸学校の先生は、それについていろいろしらべました。そしてとうとう、すっかり昔のようないいものが出来るようになって、東京大博・・・ 宮沢賢治 「紫紺染について」
・・・ただ遥かにかの西方の覚者救済者阿弥陀仏に帰してこの矛盾の世界を離るべきである。それ然る後に於て菜食主義もよろしいのである。この事柄は敢て議論ではない、吾等の大教師にして仏の化身たる親鸞僧正がまのあたり肉食を行い爾来わが本願寺は代々これを行っ・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ 関東大震災のときも、本郷は大丈夫であった。西方町という火事なしが名物の一区画さえある。本郷も随分変化して、いくらかあぶなっかしくはあるかもしれないが、先ずそれもあとのこと。火事と空襲とは別箇のものと十分知りながら、わたしも本郷安全説に・・・ 宮本百合子 「田端の汽車そのほか」
・・・ はじめ投書した某氏は男で某紙の家庭欄に紹介されている代用食の製法にしたがってためしてみたらたいへんどっさり砂糖がいった、砂糖の不足がちな現在ああいう代用食は実際的でないから一考を要するという意見であった。するとそれに対し某夫人が署名入・・・ 宮本百合子 「私の感想」
出典:青空文庫