多少のアブセンス・オブ・マインドというのは、誰にもあることである。あるのが普通といってよかろう。しかし私は可なり念入のアブセンス・オブ・マインドをやったことがある。今に思出しても、自分で可笑しくなるのである。 それは私・・・ 西田幾多郎 「アブセンス・オブ・マインド」
・・・それは「センス」sense でもない、「ジン」 Sinnでもない。マールブランシュはいうまでもなく、デカルトにすらそれがあると思われる。しかし私はフランス哲学独得な内感的哲学の基礎はパスカルによって置かれたかに思う。その「心によっての知」 ・・・ 西田幾多郎 「フランス哲学についての感想」
・・・それは「センス」sense でもない、「ジン」 Sinnでもない。マールブランシュはいうまでもなく、デカルトにすらそれがあると思われる。しかし私はフランス哲学独得な内感的哲学の基礎はパスカルによって置かれたかに思う。その「心によっての知」 ・・・ 西田幾多郎 「フランス哲学についての感想」
・・・ M署の高等係中村は、もう、蚊帳の外に腰を下して、扇子をバタバタ初めていた。「今時分、何の用事だい? 泥棒じゃあるめえし、夜中に踏み込まなくたって、逃げも隠れもしやしねえよ」 吉田は、そう考えることによって、何かのいい方法を・・・ 葉山嘉樹 「生爪を剥ぐ」
・・・そのような殺しても殺しても生きる命としての抵抗力、強い生活感覚、それこそが、きょうの歴史を生き進んでいるわたしたちの人民的センスであり、抵抗の源泉であると思います。生活と闘いの達人となってゆこうと努力しているわたしたちにとって、理論と行動、・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ 服装について、センスということがよくいわれる。服装についてセンスというのは、ただ単純に配色、アクセントなどについてだけ語られるものだろうか。そうは思えない。やつれた体に粉飾してアクセントをつけたとして、それがよいセンスだろうか。美しさ・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・常に一種のグッド・センスをもって、現実の自身の家庭生活に処しておられる。これも、婦人作家の生きかたとして注目されるべき点です。 この間、瀧井孝作氏が「黒い行列」の印象を読売紙上で書いた時、或る人があなたは日本の婦人作家中最もインテレ・・・ 宮本百合子 「含蓄ある歳月」
・・・ こういう役所の人たちが、日本の文化人のセンスの程度を余りよく知っていないということは、様々の現実の不便を招いているのだろうと思う。海外へおくる映画やそのほかのものに、屡々見当はずれで不成功なもののあるのは、こういう自分たちへの評価の明・・・ 宮本百合子 「国際観光局の映画試写会」
・・・はためにみれば、そもそも文学をはずれて繁栄している中間小説と、私小説がひとしお煮つまって一種のエッセイ風の作品となっている尾崎一雄の文学とを同列に語ることさえ、謂わば荒っぽいセンスである。「私小説の否定」というきょうの文学のやわたしらずの中・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・そこには卒直な物言いの人の知らないような、細かいセンスが働くであろう。私はそういうセンスが藤村の文体と密接に関係しているように感じる。一例をあげると、藤村のしばしば使っている「……と言って見せた」という言い回しである。前後の連関から見て、他・・・ 和辻哲郎 「藤村の個性」
出典:青空文庫