明日の女らしさ、男らしさ。のびのびとした手脚と美しく張った胸。女性の肉体の魅力は解放された女性の肉体にこそあります。まめやかで、創意にみちた精神の輝きのあふれた眼ざしと、よく働きよく笑う女性の笑顔を、どんな男がまねられまし・・・ 宮本百合子 「自然に学べ」
・・・今日の日本では一般の生活感情が動揺しているとともに、そこにふくまれている創意性も複雑な転変を経験しているのが実際であろう。 ひとの話では、染色の技法は今日或る転機に面しているそうだ。これまでは、刺繍だの金銀泥が好きなだけつかえて、染料の・・・ 宮本百合子 「生活のなかにある美について」
・・・例えば人類が最初の火を自分たちの生活のなかにとらえて来たときのことについても、縫針というものを発明したきっかけなどについても、極めて活々とした人間の実験の精神・偉大な創意の導きとしての日常のささやかな思いつき、精神のこまやかな敏活さなどが、・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
・・・p.281○狂妄な帝国主義は驕傲を僧衣に包んで「神の御意なり」と叫ぶのである。○先ずもってわれわれヨーロッパの世界は、この新しい神の国、ロシアという世界国家の中で崩壊しなければならず、然るのち初めて救われるのである。文字通り彼は云っ・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・それは、つまり、作者独特の創意が「物語る」興味以上に深く素材に浸透していないということではございますまいか。 このような用語が許されるならば、前者は感情的偏狭により、後者はその殉情的 extravagance により、倶に、心に迫る芸術・・・ 宮本百合子 「野上彌生子様へ」
・・・ 大衆の自覚とわが声でものを言わんとする情熱が強くなればなるほど、大衆の持つ社会的・文化的地盤が現実生活の中で高められれば高められる程、大衆の創意性とその表現の形とは多様になって来るものである。それ故、われわれのところに於ても、かつて政・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・ この実行は出来るだけサークル員の創意性を重んずる態度をもって話し合されねばならない。この際工場にいるサークル員がメーデー闘争の経験を書き、メーデーへの決意を書き、仲間へメーデーへのケッ起を訴えたものを書くように、それらが何処に於てより・・・ 宮本百合子 「メーデーに備えろ」
・・・鈿女命の踊りは、氏族に重大な問題が起った時に、後世のような偏見は持たれず、女がその解決のために自由な創意を働かすことが出来たという当時の社会の事実をも語っている。 こういう原始社会の生産が次第に進んで、日本民族は次第に一定の土地に一定の・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・同時に、日本の平和と幸福とのために、婦人の任務の価値を十分知っている有能な男子の社会活動の諸分野に、婦人の創意と批判とを参加させ反映させる公の機会の一つとすること。この二通りの作用をとおして、男子と婦人との真面目、積極な協働こそ、民主的な社・・・ 宮本百合子 「われらの小さな“婦人民主”」
・・・ただ昔と今との相違は文壇の外に居るので、新聞紙で名を弄ばれる憂が少いだけだ。荘子に虚舟の譬がある。今の予は何を言っても、文壇の地位を争うものでないから、誰も怒るものは無い。彼虚舟と同じである。さればと云って、読者がもし予を以て文壇に対して耳・・・ 森鴎外 「鴎外漁史とは誰ぞ」
出典:青空文庫