・・・つまりそれだ。つまり双子星座様は双子星座様のところにレオーノ様はレオーノ様のところに、ちゃんと定まった場所でめいめいのきまった光りようをなさるのがオールスターキャスト、な、ところがありがたいもんでスターになりたいなりたいと云っているおまえた・・・ 宮沢賢治 「ひのきとひなげし」
双子の星 一 天の川の西の岸にすぎなの胞子ほどの小さな二つの星が見えます。あれはチュンセ童子とポウセ童子という双子のお星さまの住んでいる小さな水精のお宮です。 このすきとおる二つのお宮は、まっすぐに向い合っ・・・ 宮沢賢治 「双子の星」
・・・深く息を吸い、力を込めて、新しい生活を創始しようとする渇仰は、あらゆる今日の女性の胸を貫いて流れているのである。刻々と推移して行く時は、生活の様式に種々の変動を与えて来ただろう。社会組織の一部は、女性を人として生活させる為に変更されようとし・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・と云いつつ、ロマン・ロランその他の前もっての忠言にかかわらず、その小冊子を三ヵ月に百五十版重ねさせた。「政治的に利用してあるパンフレットの如きは一部一法二五。十部十二法。百部百法。五百部四五〇法。千部七五〇法というような割引率で、数万を頒布・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 古い草紙につきものの乾いた雲母のにおいを其時なつかしくかいだ。そう云う記憶がある為、偶然見出した書籍館書目は、ひどく私に興あるものに思えたのだ。 それは、和漢書の部で明治九年に印刷されたものである。四六版、三百十二頁に、十行ならび・・・ 宮本百合子 「蠹魚」
・・・而も、発育したい希い、より完美な芸術を創始したい熱情に鞭打たれた場合、少くとも自分は、惨めに焦慮する心持を知っている。それが、如何に統一を破るかも知っている。そのために翻って、どんなに製作に向っての無私が必要だか、意識下の均衡が大切だか思い・・・ 宮本百合子 「透き徹る秋」
・・・それは、遠い昔、政治的思想的に紛糾を重ねた欧州の故国を去って、未開の新土に生活を創始しようと覚悟した程のものは、皆、何等かの意味に於て、強い箇人の自覚と、何物にも屈しない独立心を備えていたからなのです。 アメリカと云っても、往古の状態は・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・新たな恋愛価値の創始、人格の飛躍が、一方、色情狂めいた性的好奇心の横行とともに、今日の社会には到るところに叫ばれていると思うのである。 けれども、翻ってそれを聞きその影響を受けようとする大多数の男性女性は、事実に於て今日如何なる生活を営・・・ 宮本百合子 「深く静に各自の路を見出せ」
・・・一つは、左翼的な或る作家の経験であるが、そのA氏は日本の企業界で歴史的に有名な或る会社の現実を、芸術に描こうと発意し、日本の実業家列伝中でも巨星であるその会社の創始者のやりかたなどを定型的資本家の観念で考えていた。創作の準備がすすむにつれ実・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
・・・日本の人が日本の在来の心に壮士風のロマンティシズムと感激とを盛って大陸にいって書いて来る文学の肉体・呼吸・体臭は大陸の文学の輪廓を出しにくいのが目下の現実であり、そこに文学としての畸形が生れている。 大石さんなどでも、書きにくさについて・・・ 宮本百合子 「文学の大陸的性格について」
出典:青空文庫