・・・の舞台装置とともに、快く目に遺っている。併し、常磐津、長唄、管絃楽と、能がかりな科白とオペラの合唱のようなものとの混合は、面白い思いつきと云う以上、何処まで発育し得るものであろう。自分には分らない。とにかく邯鄲は、材料も適したものであったと・・・ 宮本百合子 「印象」
・・・あわれに打ちくだかれた骨の正しい手当、また傷の中の小銃弾や大砲の弾丸の破片をX光線の透写によって発見する装置が、この恐ろしい近代戦になくてもよいのであろうか。 キュリー夫人は科学上の知識から、大規模の殺戮が何を必要としているかを見た。罪・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・つまりラジオ拡声装置所は集団農場の拡大につれ二万四千から五万千ヵ所に、聴取者は二百万人だったのが四百万人になろうとしている。 次に見落してならないのは映画館の増大だ。五ヵ年計画の初めシネマ館は一万五千三百あった。ここにも晴れやかな拡張だ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・カーメルヌイ劇場で、タイーロフが未来派じみた極めて派手で綺麗な舞台装置で上演した。 この劇中劇ではソヴェト同盟の劇場でも、小道具なんかに凝りすぎ、ウンと金をかけてしまったのを、管理局からやって来た役人へは胡魔化して報告する場面その他、見・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・出来るなら、簡素なハーフ・ティンバーの平屋にし、冬は家中を暖める丈の、暖房装置が欲しゅうございます。 道路と庭との境は、低い常盤木の生垣とし、芝生の、こんもり樹木の繁った小径を、やや奥に引込んだ住居まで歩けたら、どんなに心持がよいでしょ・・・ 宮本百合子 「書斎を中心にした家」
・・・芸術部員は、研究室をもって、舞台装置、衣裳、照明。専門にわかれ、それぞれ最近の様式をとり入れて、劇芸術としての完成を努めている。 一方、教育部は、いま日本女のとなりに腰かけて、注意深く舞台と若い観衆との間におこる呼吸のメリ、ハリを観察し・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・襖に当って屈曲した三尺幅の光の波が、くっきり斜に、表現派の舞台装置のように、光度を違えて、模様を描いて居る。 ◎ 宮原氏と原稿の話をした時、二十四字づめを使って居ると云うと 彼は「それ丈は一寸違って居・・・ 宮本百合子 「一九二三年夏」
・・・に浮いてブラブラして居るのに気がつくと、地面ごとあの下の方までころがって行きそうな不安や、若し此の草履を落したら誰があすこから拾って来て呉れるかしらと思うと、気味が悪くなって、ジリジリと後へ下って傍の草地へ座ってしまった。 叔父はすぐそ・・・ 宮本百合子 「追憶」
・・・一吹風が渡るとたくさんなたくさんな松の葉が山のしんからそよぎ出すように、あの一種特別な音をたてて鳴りわたるのを聞きながら、蕗の薹のゾックリ出た草地に足を投げ出して、あたりを見はらすのが、六にとって何よりの楽しみなのである。「きれえだんな・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
三春富士と安達太郎山などの見えるところに昔大きい草地があった。そして、その草地で時々鎌戦さが行われた。あっち側からとこっち側からと草刈りに来る村人たちは大方領主がそれぞれちがっていて、地境にある草地の草を、どっちが先に刈る・・・ 宮本百合子 「村の三代」
出典:青空文庫