・・・よくソヴェトの教育方針では個性の発育が阻止されるだろうという人がある。 勿論教育の基礎的方針は一斉に、学問と生産とを結びつけた共産主義教育というものをやっている。その中で個性がどうなるかという問題だ。個性の尊重というのは、要するにどうい・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・ 一体、なぜこのように自分の進路は、いつもいつも阻止されなければならないのだろう。 彼女は畏怖と失望に混乱した心持で、その断れ目もなく続いている牆壁を観察し始めたのである。 そして、これは、お前達を不仕合わせな目に合わせないため・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・自分のその文章などは「末世の僧の祖師を売る者、妄言当死」と迄頭を垂れている。もしそのような芸術至上の帰依に満ちた芸心があるならば、佐藤氏も「モスクワ」が芸術品かそうでないか位は嗅ぎわけ得て然るべきであった。或る作家が未熟で、下手で書きそこな・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・の中でそれについて、素子にこういう意味を云わしている。生活というものは、鉄道線路のようなものではない。河のように野原を流れてゆくものだと思う。河は、両側に岸があって、水はいつもその間を流れるもののように思われるが、それは違う。岸があるから河・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・勇造の父親が、息子に学問を許さなかった心持、生意気になると、憤激をさえもってそれを阻止した心持、そこには何があったのだろう。 この作家の少年時代の好学心の具体化は常に父親のそういう態度との挌闘をもって、苦学の実力でもって結果的に闘いとら・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・この現実のままでは空文に終る結婚と離婚の自由を、真実に社会的責任に裏づけられたものとするために、私たちが試みるすべての生活改善の努力を、阻止しようとしたり、抑えようとしたりする権力をも、私たちは肯定しないのである。〔一九四八年四月〕・・・ 宮本百合子 「離婚について」
・・・ こういうことを考えて小生は一月一日に父の計画を阻止する手紙を書いた。志は結構であるが、それを有効に実現することができない。臣民として「なんの役にも立たぬ」ことを実行するよりは、「何か役に立つ」ことを実行する方が忠である。現下の険悪な世・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫