・・・その時、一の橋とたてがはの川の色とは、そつくり広重だつたといつてもいゝ。しかし、さういふ景色に打突かることは、まあ、非常に稀だらうと思ふ。 郊外の感じ 序でに郊外のことを言へば、概して、郊外は嫌ひである。嫌ひな理由の第一は、妙に・・・ 芥川竜之介 「東京に生れて」
・・・ もう一つ特に私が宇都野さんに望む所は、時々はもう少し不用意な、読みっ放しの云わばもっとそつのある歌をよんで見せて頂きたいと思う事である。これは無理かも知れないが、ただ私だけの希望である。 最後に私は宇都野さんの歌集が近き将来に世に・・・ 寺田寅彦 「宇都野さんの歌」
・・・おめにかかれば、先生はああいう方であるからそつのない、鷹揚な、包括力ある言葉をかけて下さったであろうと思う。 坪内先生は非常に聰明な資質の先達者であった。正宗白鳥氏が先日、逍遙博士は文学の師であるばかりでなく生死に処する道を教えた方であ・・・ 宮本百合子 「坪内先生について」
出典:青空文庫