・・・寒さがぞくぞくからだに浸みる。豚はとうとうくしゃみをする。「風邪を引きますぜ、こいつは。」小使が眼を大きくして云った。「いいだろうさ。腐りがたくて。」助手が苦笑して云った。 豚が又畜舎へ入ったら、敷藁がきれいに代えてあった。寒さ・・・ 宮沢賢治 「フランドン農学校の豚」
・・・ 工場クラブの広間には床几が並んでいる。赤い布のかかったテーブルがある。 ぞくぞく陽気な婦人労働者が入って来た。てんでに床几へかける。メーラがジャケットのポケットへ両手を突こんで、やって来て、赤い布のかかったテーブルの前へ坐った。・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・夜になると雨戸のところから其が見えると、ぞくぞくすることを教えたのも、その小坊僧さんであった。 子供らにとって、新しい冒険と面白さの尽きない夏がはじまった。祖母と母も、新しい鰺を美味しがって、涼しい一夏を送れそうに見えた。ところが、妙な・・・ 宮本百合子 「白藤」
出典:青空文庫