・・・手術後、ガーゼのつめかえの方法をいい加減にしたので、膿汁が切開したところから出きらず、内部へ内部へと病毒が侵入して、病勢は退院後悪化した。同志今野が、どうも頭は痛くなって来たし変だと思い、苦痛を訴えたら、済生会の軍医は、却ってこれまで一日お・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・この二十五日に退院して林町に住みます。 ――何から書こうかしら。二月二日、五日間帰宅を許されて帰っていた私が、黒い紋付を着て坐っている食堂の例のテーブルの傍で、咲枝が書いたハガキにより、貴方が私の健康につき最悪の場合さえ起り兼ねまじく御・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・今ここに集っている婦人の中にはおそらく数百人の活溌な突撃隊員があるだろう。数十人の活動的な代表員があるであろう。それらの階級的良心ある勤労婦人がプロレタリア革命の意味を真に理解し、偉大な助力をプロレタリア国家に捧げていることは疑いない。我々・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・ お互に故郷を出て働いている身であれば、それらの優良行動隊員にも、工場生活の青少年の心の内は十分の実感でわかる筈だろう。ただお目付役の威厳で、目の前でその小路を引きかえさせるばかりでは、若い心の何かの渇きや遣り場のなさがそのまま高尚な希・・・ 宮本百合子 「女性週評」
・・・今年アガーシャ小母さんは、工場委員会と『労働婦人』という雑誌社から、モスクワ煙草工場の最年長突撃隊員の一人として、賞を貰った。赤いリボンで飾ったレーニンとクララ・ツェトキンの肖像画、『労働婦人』二年間の購読券。アガーシャ小母さんが踊る間、そ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の三月八日」
・・・衝撃隊員は一人のこさずソヴェト式の善玉。妨害分子は一人のこさず悪玉ぞろい。その二つの型の間に、機械的なマルクシズム応用の対立があるだけで、真のボルシェビキらしい具体的な悪玉への働きかけや、職場の動揺している労働者へのよびかけ、親切な導きが一・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・ どの産院でも、出産後一週間で退院するのが原則になっている。ここではこんなにいい条件で扱われた赤坊が、では退院したらどうなるだろう? その心配は、またちゃんと別な方法で充される。事務室の一部に、カード室がある。ゾックリ帖簿が整理され・・・ 宮本百合子 「モスクワ日記から」
・・・お父様御自分だって却ってよかったって云っていらっしゃる位なの。退院したら浜名湖へ行くんだって楽しみにしていらっしゃるわ」とつけ加えた。三尺ほどの距りをおいて此方側に立ってその話をきいた私は、「それがいい、それがいい」と、いつもい・・・ 宮本百合子 「わが父」
・・・のために役立つ協定や条約をただの紙きれとしてしまおうとしている者たち、軍備の廃止のために協力するどころか、すでにおそるべき結果を生み出している軍事同盟政策に熱中して、西ドイツに、もとのヒットラーの突撃隊員をふくむ師団をつくった、極東の平和を・・・ 宮本百合子 「わたしたちには選ぶ権利がある」
・・・ 退院者の後を追って、彼女たちは陽に輝いた坂道を白いマントのように馳けて来た。彼女たちは薔薇の花壇の中を旋回すると、門の広場で一輪の花のような輪を造った。「さようなら。」「さようなら。」「さようなら。」 芝生の上では、日・・・ 横光利一 「花園の思想」
出典:青空文庫