・・・月賦で家を建てる方法。そんな風な経済記事が扱われ、政治にしろ、そのときの大臣連の出世物語、政界内幕話という工合であった。戦争がはじまったとき、すべての浪花節、すべての映画、すべての流行唄、いわゆる大衆娯楽の全部が戦争宣伝に動員された。大衆文・・・ 宮本百合子 「商売は道によってかしこし」
・・・天幕を建てる場所は海でも山でも、その土地の所有者に断れば殆ど自由ですから、毎年変った土地へ、思うさまに行くことが出来るわけです。 日本ではまさか女ばかりでそんなことも出来ますまいが、罐詰にバタその他必要な程度のものの入った小さなバスケッ・・・ 宮本百合子 「女学生だけの天幕生活」
・・・ 育児教育の方を見れば、一例としては新しい住宅建築共同組合で建てる建物の中には付属托児所を造るのを理想としてやっている。それでそういうものは最近非常に多くなって、多いところになると区の中にいくつもある。また工場では工場が托児所をもってい・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・ 小屋を移すと云っても只オイソレとするのではなく、水排けがどう云う風になってるかの、光線の射入が完全に出来てなく風の強くあたる処はいけないのと云って、到々自分共の遊び場になって居る広っぱの隅に建てる事になった。 植木屋を呼んで、朝早・・・ 宮本百合子 「二十三番地」
・・・○隣の大工仕事、 こわした家、新しく建てる家 六月二十五日から林町に来る スーラーブ進む 七月七日 妙に寒い日 腸をこわす、下痢疲れ。仕事出来ず 七月八日 朝食堂にゆく 有島氏の死 四十六・・・ 宮本百合子 「「伸子」創作メモ(二)」
・・・日ごとにその繰り言を長くし、日ごとに新たな証拠を加え、いよいよ熱心に弁解しますます厳粛な誓いを立てるようになった。誓いの文句などは人のいない時十分考えて用意しているのである。今やかれの心は全く糸の話で充たされてしまった。かれの弁解がいよいよ・・・ 著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩 「糸くず」
・・・地極の氷の上に国旗を立てるのも、愉快だろうと思って見る。しかしそれにもやはり分業があって、蒸汽機関の火を焚かせられるかも知れないと思うと、enthousiasme の夢が醒めてしまう。 木村は為事が一つ片附いたので、その一括の書類を机の・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・ 秋三が安次の首筋を持って引き立てると、安次は胸を突き出して、「アッ、アッ。」と苦しそうな声を立てた。「早よ歩けさ。厄介な餓鬼やのう!」「腹へって腹へって、お前、負うてくれんか!」「うす汚い! 手前のようなやつ、負えるかい。・・・ 横光利一 「南北」
・・・ お霜は何か考えているらしく黙っていたが、「お前、小屋建てるなら組で建てて貰うまいか?」と云い出した。「組が建ててくれりゃ結構やけどなア。」「そりゃ建てるわさ。いっぺん組長さんに相談してみよまいか?」「どうなと勝手にせ!・・・ 横光利一 「南北」
・・・で、心を正直に持ち、ついに身を立てることができたのであった。 辰敬はこの体験にもとづいて、学問の必要を何よりも強く力説している。したがってこの家訓は、学問と道理とに対する関心のもとに、主として学問の心得を説いたものだといってよいのである・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫