・・・科学が一つの歴史的情熱となっているソヴェトと比べて、日本の科学はどんな扱いをうけているでしょう。知能労働者はこちらでは休みの家もなく、業績に対して社会的保証がありません。社会主義的民主主義の社会では、文化の仕事に従う者が、知能的労働者として・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・民主日本建設のために人民一般の知能水準の向上のために義務教育の年限を長くしなければならないとされ、文部省は六・三制ということをきめた。九年の義務教育と云わず六年と三年を分けて六・三制と考えている。何故一まとめに九年制といわないのだろうか。九・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・六年間の義務教育で四年の実力しかなかったのだから、六・三制で六年だけ出た若い人が四年修業者だということは明瞭な事実である。智能の低い、考え判断する能力を与えられていない人民の多数が、自分たちの貧困を克服するために、組織的に行動するよりもアナ・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・一方それとは全く反対に、有り余る金はあり、子供の教育に責任を負うに充分な丈の健康と知能とは持ちながら、所謂自由が味えない為、容色が衰えるなどと云う恐怖から、無良心に科学の発達を濫用する者の一群になると思います。 抑々、産児制限などと云う・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・私がだまって居るので、いろいろの事に話が渡って、しまいには、女に女学校以上の学問を養わせる事や、専門的な智能を養わせる必要はない。学問などをするから男を馬鹿にしてかかるなどと云って居た。時々、私をかあっとさせる様な事を云う。まるで私とすっか・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・その上学童の知能は低下したからと、文部省はこの新学期に、四学年用のものをのぞいて数学の教科書『さんすう』の内容を一学年ずつくり下げたものにして与えた。それも一般にはしらさずこっそりやって、父兄をおどろかし、子供たちをがっかりさせている。学童・・・ 宮本百合子 「平和をわれらに」
・・・怒らず働いて、生活の不安がなくなるものならば、どうして少年少女の時代から怒らず工場でよく働きつづけた今日の青年達が、弱体であり、知能が低いと保健省を驚駭させるのであろうか。 働いている若い女のひとと、働らかないで暮していられる女のひとと・・・ 宮本百合子 「私たちの社会生物学」
・・・ここでばかというのは智能が足りないということではない。才能すぐれ、意志強く、武芸も人にまさっている、というような人でも、ばかなのがある。それはうぬぼれのある人である。「我することをば何れをも能きこととばかり思ふ」人である。こういう人は下の者・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫