・・・すると、勇吉は、炉ばたでちびちび酒を飲みながら、「そげえに若えもん叱るでねえよ、今に何でもはあ、ちゃんちゃんやるようになる、おきいはねんねだごんだ」「何がねんねだ! ひとが聞いたらふき出すっぺえ。ねんね嫁け! お前」 きいはつら・・・ 宮本百合子 「田舎風なヒューモレスク」
・・・それから、ちびちび飲み、やがて喉一杯に飲んで、白状した。「美味しいわ、これは案外」 嫌いな私が先棒で、二三本あったカルピスが皆空になった。「ねえ一寸、もうなくてよ」「困ったな、食い辛棒にまた一つ欲しいものが殖えられては困った・・・ 宮本百合子 「この夏」
・・・ 富田は意地きたなげに、酒をちびちび飲みながら冷かした。「もうおしまいか。竜頭蛇尾だね。そんな話なら、誉めなけりゃあ好かった。」 四 この時戸口で、足踏をして足駄の歯に附いた雪を落すような音がする。主人の飼っ・・・ 森鴎外 「独身」
出典:青空文庫