-
・・・ ――何とも、かとも、おいたわしいことに――裾をつつもうといたします、乱れ褄の友染が、色をそのままに岩に凍りついて、霜の秋草に触るようだったのでございます。――人も立ち会い、抱き起こし申す縮緬が、氷でバリバリと音がしまして、古襖から錦絵・・・
泉鏡花
「眉かくしの霊」
-
・・・悪気流は、人間らしい知性の開発と光彩とを圧しつつもうとしている。それに対して抗いつつ、或る必要な力をもっていないという自覚に苦しんでいる、そこから現代のトスカが湧くのである。知性の喪失を、梶が謳歌していることに対して、もし、苦しんでいる知識・・・
宮本百合子
「「迷いの末は」」