・・・而もわれわれが猛烈に、決然と、婦人大衆を低く繋ぐ反動文化と戦闘を開始しないことは、とりもなおさず日本におけるプロレタリア文化運動全体を、その重要な一部で同じように低く、重く、敵の杭につなぎとめて置くということになるのだ。 われわれの・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・ 私小説的境地からの脱出として社会文学ということがいわれた時、文学は作者と作品の世界とを繋ぐ血肉的な関係に対する支配を失っていて、作家の創作的意図で作品が作家の生活の外でどしどし纏められてゆく危険に曝されていたのであるが、社会的な素材を・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・のような計量で恋愛をするのみか、若い女も今日では、あわれにもそれを近代性が彼女に与えた賢さであると勘ちがいしているのが少くない、これらの事情はもつれあって、全く旧来の家と家との縁組みの習俗へ若い世代を繋ぐかたわら、それは現代の経済内容を盛っ・・・ 宮本百合子 「成長意慾としての恋愛」
・・・従って自分の臍の緒を繋ぐ階級が文化の宣伝具としてジャーナリズムを統制してゆけば、その統制に応じて執筆者、大小作家がその統制に服してくるのは当り前だ。ブルジョアジーがファッショ化すれば、ブルジョア作家はファッショ化する。この関係は切っても切れ・・・ 宮本百合子 「ブルジョア作家のファッショ化に就て」
・・・その犬の飼われている家は、小石川の二つの丘陵地帯を繋ぐ、幅広い坂の中途にある。坂の中途に建った家がよくそうである通り、家全体の地盤が坂より低い。二三段石の踏段を降りて、門から玄関までの敷石を渡ることになっている。細長い、樫の木の生えた、狭く・・・ 宮本百合子 「吠える」
出典:青空文庫