・・・墓地の番人で癲癇持ちのヤージ。一番年かさなのは後家で酒飲みの裁縫女の息子グリーシュカ。これは分別の深い正しい人間で、熱情的な拳闘家である。 後年、ゴーリキイは当時を回想して書いている。かっ払いは「半飢の小市民にとって生活のための殆ど唯一・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・それにあの男の作は癲癇病みの譫語に過ぎない。Gorki は放浪生活にあこがれた作ばかりをしていて、社会の秩序を踏み附けている。これも危険である。それに実生活の上でも、籍を社会党に置いている。Artzibaschew は個人主義の元祖 Sti・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
・・・ ところでこのような意味の転換が行なわれるための最も重大な急所は、最初に「面」が「役割」の意味になったということである。面をただ顔面彫刻としてながめるだけならばこのような意味は生じない。面が生きた人を己れの肢体として獲得する力を持てばこ・・・ 和辻哲郎 「面とペルソナ」
・・・ 昨秋表慶館における伎楽面、舞楽面、能面等の展観を見られた方は、日本の面にいかに多くの傑作があるかを知っていられるであろう。自分の乏しい所見によれば、ギリシアの仮面はこれほど優れたものではない。それは単に王とか王妃とかの「役」を示すのみ・・・ 和辻哲郎 「面とペルソナ」
出典:青空文庫