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・・・ 祖母はいろいろと強い事を云う。 田地を取りあげるとか、返せなかった時にはどうするとか云うけれ共、菊太は只、哀願を続けるばっかりである。 私は、祖母の意地の悪い、菊太を眼下に見る様な様子を見ると菊太の子供等がこれを見た時の気持を・・・
宮本百合子
「農村」
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・・・郡山が膨張して、附近の村々の若いものはそこの工場で働くようになったし、大戦のころ米価暴騰につられて田地を買い込んだ農民たちは忽ちその借金なしに追い立てられることとなり、村の生活へは明け暮ひろい流れで町の息吹きが動きはじめた。 やがて、そ・・・
宮本百合子
「村の三代」